米ビットコイン採掘企業Hut 8は、エリック・トランプおよびドナルド・トランプ・ジュニアと提携し、大規模マイニング会社「American Bitcoin Corp.」を設立した。Hut 8が保有するASICマイナーを新会社に移管し、同社の計算部門からマイニング業務を完全に分離することで、収益構造と資産評価の透明性を高める狙いがある。

新会社にはトランプ家が戦略責任者として参画し、Hut 8はインフラ提供と運用支援を継続。業界関係者は、この動きが投資家にとって「本物のビットコイン基盤」への関心を喚起する転換点となり得ると見ている。

トランプ家が主導する新会社「American Bitcoin」とは何か

2025年4月1日、Hut 8 Corp.は、エリック・トランプおよびドナルド・トランプ・ジュニアとの提携により、米国において産業規模のビットコイン採掘会社「American Bitcoin Corp.」を設立した。Hut 8が保有していた主要なASICマイニング機器を、新たに改名されたAmerican Bitcoinへ移管し、従来の計算部門とは切り離された形で独立運用される。これによりマイニング事業は別会社として再構成され、投資家にとって収益性や資産性の可視化が進むことが期待される。

新会社の経営体制にはマイク・ホーが会長、マット・プルサックがCEO、そしてエリック・トランプが戦略責任者として参画。さらにHut 8のCEOであるアッシャー・ジェノートや、著名投資家のジャスティン・マティーン、マイケル・ブロウキムらも取締役に加わる布陣となっている。Hut 8はAmerican Bitcoinに対し、ASICマイナーのコロケーションと管理サービスを提供し、実務面での支援も継続する。

これによりHut 8はインフラ企業としての立場を明確化し、同時にAmerican Bitcoinは純粋な採掘事業者としての地位を確立。マイニングとインフラを役割分担するこの分社化戦略は、業界内でも注目を集めている。

マイニング分社化の狙いと資産価値の再定義

American Bitcoinの設立は、単なる事業拡大ではなく、暗号資産ビジネスの構造改革という意味合いを持つ。Hut 8はこれまで「Compute部門」として運用してきた採掘事業を分離することで、企業全体の収益構造を明確化し、特に暗号資産のマイニングというボラティリティの高い領域を別軸で評価可能にした。

この戦略により、採掘量や電力コストといった変動要因の影響をインフラ事業から切り離すことができ、両社の財務健全性をよりクリアに提示できるようになる。また、Hut 8が主力とするデジタルインフラ事業に専念することで、安定的な収益源としての基盤強化にもつながる。エリック・トランプが語る「有利な条件下でのマイニングによる成長機会」は、こうした分社化によって初めて現実性を帯びてくる。

マイニング事業の再定義は、暗号資産業界における企業価値の評価手法そのものを見直す契機となり得る。特に「純粋なマイナー」としての立場を打ち出すAmerican Bitcoinは、従来型のホールディングス構造に比べて市場評価の透明性を得やすく、今後の資金調達や株主評価にも影響を及ぼす可能性がある。

著名人の参入が意味する市場への波及効果

American Bitcoinの立ち上げには、単なる経営陣としてのトランプ家の参加以上の意味がある。特にエリック・トランプおよびドナルド・トランプ・ジュニアといった政治的・経済的影響力を持つ人物の関与は、暗号資産業界に対する世間の見方そのものを転換させる可能性を秘める。

Quantum ExpeditionsのCFOであるマティ・グリーンスパンが述べたように、「トランプ家がビットコインを採掘し始めるという事実」は、投資家心理を大きく動かす象徴的な出来事である。従来、暗号資産は一部の専門家やハイリスク志向の投資家の領域と見なされてきたが、政治的知名度を背景にした参入は、主流金融市場や機関投資家の態度にも変化を促す契機となる。

こうした動きは、単なるイメージ戦略ではない。トランプ家の参入により、ビットコインマイニングが「政治経済の一部」として認識され始める可能性がある。その結果、規制・税制・公共インフラとの連携といった新たな議論が生まれ、業界の正統性と持続性に対する期待値が高まる局面も想定される。暗号資産が次の段階へと進化するための起爆剤として、この一手の影響力は無視できない。

Source:cryptonews