世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、年次投資家向け書簡にて、米国の国家債務の増大が米ドルの国際的地位を揺るがす要因となり得ると指摘した。
同氏はビットコインなどのデジタル資産を「革新的」と評価する一方、財政悪化が続けばドルの代替手段としてビットコインが選ばれる危険性があると警鐘を鳴らした。
仮想通貨ETF市場では2億2600万ドルの資金流入が報告されており、実資産のトークン化やETFの成長も含め、デジタル経済の台頭がドルの覇権に影を落としている。
フィンクCEOが指摘した米ドルの脆弱性と国家債務の影響

ラリー・フィンク氏は、米国の国家債務拡大が世界基軸通貨としてのドルの信認に影響を及ぼすと警告した。アメリカは長年にわたり、経済力と軍事的影響力を背景にドルを通貨の覇者として維持してきたが、累積債務の増加と財政赤字の常態化が通貨の価値を根底から揺るがしかねないと懸念が強まっている。
そのような中でフィンク氏は、ビットコインのようなデジタル資産が「ドルよりも安全な選択肢」と見なされつつある点に注目している。これは、米国の金融政策に対する信頼の低下と、分散型通貨に対する期待の裏返しとも言える。ドルが無条件に信頼される時代は終焉を迎えつつあり、代替資産への資金移動は投資家心理の変化を映している。
米国が財政の健全性を確保できなければ、ビットコインを含むデジタル資産が単なる投機対象を超えて、国際取引や資産保全の手段として現実的な選択肢となる可能性が高まる。これは金融システムの根幹を揺るがす問題であり、単なる市場の一過性の動きでは済まされない構造的な転換点である。
仮想通貨ETFの資金流入とトークン化の進展が示す投資環境の変化
CoinSharesのレポートによれば、仮想通貨ETFには1週間で2億2600万ドルの資金が流入し、特にビットコインETFがその約86%を占める1億9500万ドルの純流入を記録した。この数字は、年初から続いていた強気相場の一環として見る向きもあるが、背景には制度的な投資家が本格的にデジタル資産へポートフォリオを分散させ始めている現実がある。
また、ブラックロックはトークン化資産市場においても主導的な立場を築いており、「BlackRock USD Institutional Digital Liquidity(BUIDL)」ファンドの運用残高はすでに約20億ドルに達したと報じられている。これにより、実世界の資産をデジタル化して分割・流通可能とするトークン化の流れが、ETFと同等の影響力を持つ新たな金融インフラとして注目されている。
さらに、同社が運用するiShares Bitcoin Trust(IBIT)は390億ドル超の運用残高を抱えており、ヨーロッパでのビットコインETF展開も進行中である。このような大規模な取り組みは、単なる市場拡大ではなく、投資商品の構造転換を意味している。トークン化とETFの融合が進むことで、投資の民主化と柔軟性が加速し、従来型金融との境界線が曖昧になりつつある。
Source:FXStreet