イーロン・マスクは、米政府がドージコインを公式採用するとの噂を明確に否定した。発端は新設予定の「政府効率省(Department of Government Efficiency)」の略称“DOGE”が仮想通貨と一致したことによる混乱である。これを受けてドージコインは24時間で5%下落、週間でも8%の値を失った。

技術指標でもRSIは38.34、OBVは低調であり、買い圧力の減退が確認されている。過去には一言のツイートで価格を動かしたマスクだが、今回の発言は市場に冷や水を浴びせる形となった。DOGE価格の先行きには引き続き注意が必要である。

略称“DOGE”が招いた誤解 マスクの施策と仮想通貨は無関係

ウィスコンシン州グリーンベイでのタウンホールにて、イーロン・マスクは米政府がドージコインを採用する計画は一切存在しないと明言した。発端となったのは、マスクが主導する「政府効率省(Department of Government Efficiency)」の略称がDOGEであったことだ。これは偶然にも彼がかつて支持を表明していた仮想通貨ドージコインと一致しており、SNSを中心に誤解が広がった。マスク自身も、当初は“政府効率化委員会”と命名する意図だったが、名称の面白味に欠けるとのフィードバックを受け、DOGEに変更したと語っている。

この混同は、ミーム文化が政策や市場にどこまで影響を及ぼし得るかという、現代特有の問題を浮き彫りにする。短縮形や語呂が一人歩きする情報環境では、事実とフィクションの境界が曖昧になりやすい。マスクの発言は、こうした風潮に釘を刺す形となったが、逆説的にいえば、マスク自身がミーム的存在であることが、火種となったとも言える。仮想通貨市場がこうした“名前の一致”で乱高下する現状は、未成熟な金融環境を物語っている。

ドージコインの価格下落が示す市場心理の変化

マスクの否定発言を受け、ドージコインは24時間で5%、1週間では8%の下落を記録した。記事執筆時点での取引価格は0.162ドルであり、テクニカル指標は明らかに弱気を示している。RSI(相対力指数)は38.34で売られすぎの水準に近く、OBV(オンバランスボリューム)も454億と低調に推移している。チャート上では「高値切り下げ・安値切り下げ」の典型的な下落パターンが観測されており、0.16ドルが短期的な支持線として意識されている状況だ。

この値動きは、投資家心理がマスクの発言だけで形成されてきた不安定さを象徴している。これまでのドージコイン相場は、2020年の「One word: Doge」ツイート、2021年の「月面計画」発言など、マスクの言動に依存してきた経緯がある。その一方で、SNL出演時の「詐欺的発言」で30%の急落を招いたように、支持の裏に潜むリスクも顕在化してきた。今回の下落は、マスクの影響力が相対的に低下しつつある兆候とも読める。ミームコインという不安定な資産クラスが今後も持続可能な価値を築けるかどうかは、より実質的なユースケースの登場にかかっている。

Source:AMBCrypto