著名投資家ロン・バロン氏が、テスラの時価総額は現在の1兆ドルから10年で5兆ドルに達する可能性があると述べた。これはTSLA株におよそ400%超の上昇余地があるとの見立てである。
自動運転技術「FSD」や2025年6月に開始予定のロボタクシー、さらに人型ロボット「Optimus」の収益化がこの成長の主軸となる。バージョン12の導入によるFSDの進化やAI処理を支えるDojoスーパーコンピュータの展開も、競争優位を強化している。
一方で、2025年初頭に38%下落した株価やCEOマスク氏の関心分散への懸念がくすぶる中、DOGEからの退任発言やFSDの実績が、改めて投資家の注目を集めつつある。
ロボタクシーとFSDの実装がもたらす利益構造の転換

ロン・バロン氏が評価するテスラの中核的成長要因は、自動運転技術「フルセルフドライビング(FSD)」およびロボタクシーの商用展開である。彼の試算によれば、1台のロボタクシーが年間5万マイルを走行することで、1台あたり年間3万〜5万ドルの利益が見込まれるという。仮にその台数が100万台規模に達すれば、年間300億〜500億ドルの収益源となる。2025年6月には「サイバーキャブ」の投入が計画されており、これはマスク氏の事業計画において極めて重要な転換点となる。
テスラは2024年第4四半期に過去最高となる495,570台の納車を達成し、FSD機能の利用も急増している。バージョン12以降は自律学習型アルゴリズムの精度が向上し、FSDの実用化が現実のものとなりつつある。この結果、テスラのロボタクシー構想は単なる技術展示に留まらず、実際のキャッシュフロー創出装置へと進化する兆しを見せている。
ただし、走行データの蓄積と規制整備、サービスエリアの拡大といった課題は依然として残る。FSDの商業化は段階的に進む可能性が高く、投資家は過度な期待ではなく中長期的視座を持つことが重要となるだろう。
OptimusとDojoが示すテスラの非自動車領域での飛躍余地
自動車を超えた事業領域において、テスラの潜在力を象徴するのが人型ロボット「Optimus」と、AIトレーニング専用のスーパーコンピュータ「Dojo」である。マスク氏はOptimusが将来的に10兆ドル規模の収益を生み出す可能性があると述べており、バロン氏の5兆ドルビジョンにおいても主要因の一つとされる。製造コストは量産により1台あたり2万ドル未満に抑えられると見られ、仮に年100万台規模の生産が実現すれば、製造原価と販売価格のギャップが大きな収益源となる。
さらに、DojoはFSDに必要な映像データの処理に加え、Optimusの知能化にも不可欠なインフラである。モルガン・スタンレーは、Dojo単体で最大5,000億ドルの企業価値を生む可能性に言及しており、これがテスラの非自動車部門に対する評価を底上げする一因となっている。現時点では製品化の進捗や市場の反応は未知数だが、AI基盤を軸に据えたこれらの取り組みは、テスラが単なるEVメーカーではなく、総合AI企業への変貌を遂げつつあることを示唆している。
一方で、これらの事業は実現性と商業化に時間を要するとの見方も根強い。将来的な競合の台頭や倫理的・法的な規制の壁も想定され、過度な収益期待には慎重さが求められる。
テスラ株の下落とマスク氏の関与に揺れる投資家心理
2025年初頭のTSLA株は年初来で38%下落し、短期的な市場評価では懐疑的な見方が広がっている。株価下落の背景には、金利上昇やEV市場の成長鈍化に加え、イーロン・マスク氏の経営関与の分散への懸念があった。特に、政府効率局(DOGE)への関与がテスラからの関心を逸らしているとの指摘は、機関投資家の姿勢を慎重にさせた要因である。
しかし、マスク氏がDOGEからの退任を検討していると述べたことで、再び投資家の期待が高まりつつある。テスラ、SpaceX、xAIといった主要プロジェクトへの集中が再評価されれば、企業価値の持続的成長を後押しする可能性も出てくる。加えて、FSDの進化やエネルギー貯蔵事業の拡大といった構造的成長ドライバーは依然として健在である。
とはいえ、テスラの未来をめぐる投資判断は短期的な株価動向ではなく、マスク氏のリーダーシップと技術革新の実現度合いに左右される。投資家にとって重要なのは、目先のボラティリティではなく、中長期の成長性に対する冷静な分析とリスク許容度の見極めである。
Source: Barchart.com