テスラ株は年初来33%下落し、イーロン・マスク氏への反発が業績に影を落としている。Stifelのアナリストは、マスク氏の政治的スタンスが消費者心理を冷やし、短期的に販売へ悪影響を及ぼす可能性があると指摘。実際に1月の市場シェアは米欧中すべてで減少を記録した。

一方で、同社はロボタクシー事業の進展や中国企業との連携など、新たな成長軸を模索しており、2025年のEPSは前年比40%増と予測されている。投資家は目標株価のばらつきと企業の収益力をどう評価すべきか、難しい判断を迫られている。

ウォール街の平均評価は「保留」にとどまりつつも、依然として23%超の上昇余地を見込む声もある中、反マスク世論と業績の攻防が株価を左右する構図が続いている。

テスラ株の価値を揺るがす「反マスク派」現象と市場シェアの急減

Stifelのスティーブン・ゲンガロ氏が率いるアナリストチームは、テスラCEOイーロン・マスク氏に対する反発が、同社の短期的な販売実績に悪影響を与える可能性があると指摘した。マスク氏の政治的発言や姿勢が分極化を招き、とりわけリベラルな支持層の一部が離脱したことで、1月には米国で7ポイント、欧州で8ポイント、中国で2ポイントの市場シェアを失っている。

Stifelはこの傾向を受けて2025年通年の納車台数を前年比10%減の186万台と予測し、目標株価も455ドルに引き下げたが、「買い」評価は据え置いた。

この動きは、マスク氏の言動が単なる企業広報の枠を超え、直接的に売上と企業評価に作用する段階に入ったことを意味する。事業の中核は電気自動車であるにもかかわらず、経営者個人の姿勢がブランドイメージと顧客ロイヤルティに大きな影を落としている。社会的発言が許容される範囲を超えた際に、企業価値がどのように揺らぐかを示す象徴的な事例といえる。

営業利益71億ドルとキャッシュフローの強さに見るテスラの底力

2024年の通年GAAP営業利益は71億ドル、純利益も同額で推移しており、第4四半期だけで23億ドルの純利益を確保している。非GAAPベースでは84億ドルに達し、電気自動車分野におけるコスト管理の徹底と、エネルギー事業や規制クレジット収益の積み重ねが安定した利益創出につながった。特筆すべきは1台あたりの製造コストが3万5,000ドル未満にまで圧縮されている点で、業界内でも異例の効率性を実現している。

また、営業キャッシュフローは149億ドル、フリーキャッシュフローは36億ドルに達し、第4四半期末の現金および投資残高は前年同期比75億ドル増の366億ドルを記録。資本的支出を伴う事業拡張の余地も十分に確保されている。

こうした財務面の健全性は、短期的な市場の騒音とは別にテスラが依然として収益力のある企業であることを示すものである。マスク氏を巡る話題が多くを占めがちだが、企業本体のファンダメンタルズが揺らいでいない事実は、長期目線での評価には欠かせない。

ロボタクシーと中国戦略に見る中長期的な成長ドライバー

2024年、テスラはカリフォルニア州において社員輸送用車両の運行許可を取得し、ロボタクシー事業の展開に向けた具体的な一歩を踏み出した。これは一般向けサービスではないが、自動運転技術の社会実装に向けた重要な布石であり、Waymoなどの競合企業と同分野での主導権を争う構えが明確になった。

加えて、中国では百度(Baidu)との連携を深め、ナビゲーションおよび地図データの統合によって現地の厳格な規制環境への対応を強化している。特に都市部の複雑な道路網に対するシステム最適化は、競争力の維持に不可欠であり、巨大市場・中国での存在感を高める戦略的意義は大きい。

ロボタクシーと中国戦略は、いずれも短期的な業績回復に直結するものではないが、将来的な事業多角化と新収益源の創出という観点で注目される。市場が目先の数字だけでなく、こうした中長期の成長布石に目を向けることが求められる局面にある。

Source:Barchart