AppleがApple Vision Pro向けに新たな操作インターフェースの導入を検討していることが、米国で認可された特許「Electronic Devices with Finger Sensors」により判明した。同特許では、タッチ・圧力・近接を検出可能な指センサーを前面ディスプレイ周辺に配置する構想が示されており、iPhone 15 Proのアクションボタンに類似した機能が想定されている。
触覚フィードバックによる応答や再構成可能な機能列の記述から、Vision Pro独自の操作体験を生み出す布石とも見られるが、現行モデルに搭載されるかどうかは明らかにされていない。
特許が示す操作性向上への具体的アプローチ

米国で認可されたAppleの特許「Electronic Devices with Finger Sensors」は、Vision Proの操作性に関する根本的な進化を意図している。従来、ヘッドセット型デバイスでは入力手段が限られ、タップやジェスチャーによる操作に依存する場面が多かった。
しかし同特許では、ヘッドセット前面に沿って配置されたセンサーによって、タッチ入力だけでなく、圧力による押し込み、さらには指が近づくだけで反応する近接入力までを可能にすると記されている。さらに、操作時の触覚フィードバックにも対応し、物理的なボタン操作に近い体感が得られる設計となっている点は注目に値する。
図面に描かれた構造物の中には、Apple WatchやiPhoneのデジタルクラウンを思わせる円形の操作系が含まれており、単一のボタン以上の多機能性が示唆される。2023年6月に出願されたこの特許は、約19ページという短さながら、具体的な構成要素とその動作原理に焦点を当てており、単なる構想ではなく実装を前提とした設計段階にある可能性を示している。
既存のiPhone 15 ProやApple Watch Ultraの「アクションボタン」の系譜に連なるものと見られるが、今回の特許には「アクションボタン」の語は登場しない。これは、Vision Proの文脈においてボタンが単なるショートカットではなく、複雑な入力を可能にする新たなUI基盤となることを示唆していると考えられる。
Vision Proの次世代機に期待される操作体系の再定義
今回の特許が直ちに製品に実装される保証はないが、その記述内容からはAppleがVision Proにおけるユーザー体験の再構築を視野に入れていることがうかがえる。特に、出力と入力の設計に関する課題認識が明示されており、視覚と音声に偏りがちな現在のXRデバイスの操作性に対する反省がにじむ内容となっている。
Appleが「再構成可能なファンクション列」と表現している機能群は、ユーザーが任意の操作を割り当てられる柔軟なインターフェースであり、従来の固定的なUI設計を覆す可能性を含んでいる。また、複数のセンサーが連動することによって、従来以上に直感的な操作が可能となる点は重要だ。
従来のヘッドセットでは、物理的な制約やユーザーの操作精度の限界により、細かな入力操作が困難とされてきた。タッチ、圧力、近接の3種の入力を組み合わせたUIは、操作の精度と柔軟性を高め、映像視聴からクリエイティブな作業に至るまで幅広い用途に対応しうる。
Appleがこの技術をあえてコンパクトな特許として提出している背景には、競合企業との差異化を急ぐ意図があるとも受け取れる。アクションボタンという既存概念の延長ではなく、新たな「身体拡張型UI」の一環としてVision Proに統合される場合、複合現実分野における操作体系そのもののスタンダードを塗り替える可能性がある。
Source:AppleInsider