保守系メディアNewsmaxが2025年3月末にIPOを果たし、株価は初値比で700%を超える驚異的な急騰を記録した。背景には、同局がトランプ前大統領を好意的に取り上げ、彼自身も頻繁に出演しているという特異な報道姿勢がある。
NMAX株は売上高に対して80倍を超える異常な水準で取引されており、時価総額は107億ドルに達する。一方で、議決権の大半をCEOクリス・ラディが握る二重株式構造や、小売投資家主導の値動きなど、構造的なリスクも無視できない。
高騰の熱狂とは裏腹に、競争の激しいニュース業界においてNMAXがこの評価を維持できるかは極めて不透明であり、冷静な見極めが求められる状況だ。
トランプ効果と異例の視聴者増が後押ししたNMAXのIPO成功

2025年3月31日、Newsmaxはニューヨーク証券取引所に上場し、その株価は初値から一時1000%超という異常な上昇を記録した。背景には、Newsmaxがドナルド・トランプ前大統領との強固な関係を築いてきたことがある。保守層に強い影響力を持つこのネットワークは、2024年11月の大統領選挙でのトランプ勝利以降、視聴者数を飛躍的に拡大し、現在では米国第4位のケーブルニュースチャンネルに成長している。
この視聴者増が直接的にIPO成功を後押ししたと見る向きもあり、NMAX株は保守的な政治動向と連動する市場資産として認識されつつある。さらに、CEOクリス・ラディのトランプとの長年の交友関係も、同社のブランド戦略を下支えしている。しかしながら、この急騰は企業の本質的価値とは異なる市場心理によって形成された可能性が高く、安定性を伴わない成長であることに留意が必要だ。
短期的な熱狂の裏には、メディア業界における視聴者の政治的嗜好と株式市場との結びつきという、新たな構造的リスクが浮かび上がっている。
極端な売上高倍率と二重株式構造が示すリスクの本質
NMAXの時価総額は2025年3月末時点で107億ドルに達しており、直近の2023年売上高1億3,528万ドルと比較すると、売上高倍率(Price-to-Sales Ratio)は80倍を超える水準にある。一般に、この倍率が高ければ高いほど、将来の成長期待が株価に織り込まれているとされるが、NMAXの場合、それは事業基盤ではなく政治的熱狂に基づいていると考えられる。
さらに注視すべきは、クリス・ラディCEOが同社の議決権の80%以上を保有するという二重株式構造である。この支配的体制は、経営の透明性やガバナンスへの不安を招きやすく、特に外部株主にとってはリスク要因となりうる。NMAXが集めた合計3億ドル近い資金は成長戦略の実行に資するものの、その実効性は競争が激化する報道業界の現実に左右される。
株価の急騰を主導したのが主に個人投資家である点も、需給バランスが脆弱であることを示しており、今後の価格変動に対する警戒は怠れない。過剰な評価と不透明な支配構造は、NMAXの長期的信頼性に対する明確な疑問符となっている。
Source:Barchart.com