Windows 10からWindows 11へのアップグレードを実施したドメイン環境で、グループポリシーオブジェクト(GPO)によってプロビジョニングされたプリンターが消失する事象が複数報告されている。Reddit上のユーザーによれば、同一デバイスでも新規アカウントでは問題が発生しない一方、旧ユーザーアカウントではプリンターが認識されないケースが確認されている。
原因は明らかになっておらず、イベントログ上にエラーが出ていないことから、プロファイルキャッシュやレジストリキーの不整合、GPO適用処理の不一致などが疑われている。暫定対応策としてドメイン離脱と再参加、もしくはプロファイル削除が提案されているが、実運用上の負荷は大きく、抜本的な対応が求められる状況である。
Microsoftは本件に関し、現時点で公式声明を発表していない。
アップグレード環境に限定されたプリンター消失の実態

Windows Reportによれば、Windows 11へのアップグレード直後のドメイン参加端末において、GPOにより自動配布されていたプリンターがユーザーアカウント単位で認識されない不具合が発生している。
特に、既存のWindows 10上でログイン履歴のあるユーザーがWindows 11環境に移行した際に、この現象が顕著となる。イベントログには異常が記録されておらず、GPO設定は正常に適用されているにもかかわらず、プリンターの割り当てが行われていない。
一方、新規作成されたユーザーアカウントでは問題が再現されず、同一デバイス上であってもプリンターが通常通り表示されるため、GPO設定やデバイス自体に起因する障害とは考えにくい。
これは、アップグレード時に引き継がれたユーザープロファイル内の構成やキャッシュ情報が影響している可能性を示唆するものである。運用中のIT管理者にとっては、対象ユーザーのプロファイルをすべて削除・再構成する手間が現実的ではなく、対応の難しさが増している。
大規模運用環境で顕在化する構成管理の綻び
既存ユーザープロファイルの構成がプリンタープロビジョニングに干渉している可能性があるとする専門家の見解は、アップグレードを前提とする運用設計に内在する脆弱性を浮き彫りにする。
Windowsのドメイン環境においては、GPOによる一括設定が広く普及しているが、ユーザープロファイルの移行やレジストリの互換性といった要素が軽視された場合、今回のような障害は再現性をもって発生する可能性がある。
特に「Package Point and Print」方式のような安全性を担保しつつ利便性を確保する手法においては、OS側の内部処理の変化が微細な不整合を引き起こし得る。
回避策として挙げられるドメイン再参加やユーザープロファイルの削除といった手段は、数百~数千台規模で運用されるエンタープライズ環境において現実的とは言い難い。Microsoftからの正式な技術的説明がない現状では、原因の切り分けと恒久対策の策定が管理者個人に委ねられている状況が続く。
GPO依存のリスクと今後の移行戦略の再考
本事案は、GPOに依存する運用体制における想定外の障害を露呈した。Windows 11の導入を検討する多くの組織にとって、GPO設定の再評価と移行ポリシーの見直しは避けられない局面にある。旧バージョンとの互換性やユーザーデータの移行設計において、より高精度な検証が求められる中、レジストリキーやプリントスプーラーサービスといった周辺要素の制御も重要度を増している。
一方、Microsoftが本件に関していまだ沈黙を保っていることは、現場の混乱を助長している。OSアップグレードにおけるプロファイル移行とGPO適用の整合性を検証するための公式ツールやドキュメントの拡充が望まれる。
現状のようにユーザー単位での手動対応が前提となる運用では、セキュリティと可用性を両立するエンタープライズITの根幹が揺らぎかねない。システム移行戦略の見直しが、いま改めて問われている。
Source:Windows Report