Intelは、Arrow Lakeアーキテクチャを採用した新型プロセッサ「Core Ultra 200HX」による生成AIアシスタントの動作デモを公開した。対象はゲーム「Black Myth: Wukong」で、音声入力に応じて攻略動画を提示するなど、プレイヤー支援をリアルタイムで行う様子を披露した。

このAIアシスタントはNPU上で動作し、フレームレートを103FPSから108FPSへと向上させる一方、同一モデルをGPUで処理した場合には94FPSまで低下するなど、処理負荷分散の優位性も示唆された。ただし、今回の映像が実機プレイかコンセプト映像かは明かされていない。

MicrosoftやNvidiaも同様の技術を開発中であり、NPUとGPUの最適化競争が激化する中、IntelはノートPC領域におけるAI実装の現実性と可能性を強くアピールした格好である。

Arrow Lake搭載のCore Ultra 200HXが示したNPUの有効性

Intelは、最新アーキテクチャ「Arrow Lake」を採用したCore Ultra 200HXにおいて、ゲーム中に生成AIアシスタントを稼働させるデモを実施した。

対象ゲームは中国神話を題材に注目を集めるアクションRPG「Black Myth: Wukong」であり、プレイヤーの音声入力に応じてAIが即座に戦術的なアドバイスや攻略動画を提示するという機能が披露された。アシスタントはおそらく一般的なサードパーティ製モデルと見られ、処理はGPUではなく、NPU（Neural Processing Unit）上で行われていた。

注目すべきは、AIアシスタントの動作によるパフォーマンスへの影響である。NPUを使用した場合、ゲームのフレームレートは103FPSから108FPSへと上昇したのに対し、同様のAIモデルをGPUで処理した場合は94FPSにまで低下した。

この数値は、NPUがAI負荷を吸収しつつ、グラフィック処理のパフォーマンスを維持・向上させる役割を果たす可能性を示している。ただし、今回のデモが実際のプレイ映像なのか、あるいはコンセプトベースの映像であったかは明言されておらず、実用段階にあるとは言い切れない。

今後の課題としては、こうしたアシスタントが多様なゲームジャンルや環境下で安定的かつ有益に機能するかという検証が求められる。Intelに限らず、MicrosoftやNvidiaも同分野で開発を進めており、NPUの存在意義は今後のPC市場における差別化要素としてさらに注目されるだろう。

AIアシスタントを巡るプラットフォーム戦略の分岐

ゲーム向け生成AIアシスタントという新たな潮流において、Intel、Microsoft、Nvidiaはそれぞれ異なる技術的立脚点を採用している。IntelはNPU活用によるCPU内処理の最適化を図っており、MicrosoftはSnapdragon X搭載のCopilotゲームAIを想定し、クラウドやモバイル端末での利用を志向している。

一方、Nvidiaは強力なGPU性能を前提に、ゲーム攻略ではなくパフォーマンス最適化に特化したAI支援を提案している。立場の違いが、AI処理をどのハードウェアに割り振るかという戦略に直結している。

Intelがデモに選んだCore Ultra 200HXは、AI性能が13 TOPSにとどまる点で他社の最新プロセッサに比べると控えめであるが、それゆえにNPUの処理効率を訴求するには適した題材といえる。

将来的に同社が投入予定の「Lunar Lake Core Ultra 200V」ではより高いAI演算能力が見込まれ、より重いワークロードでの実用も視野に入るだろう。また、最大50 TOPSの処理能力を誇るAMDの「Strix Point Ryzen AI 300」との比較検証も、業界にとって重要な観測点となり得る。

各社のAI活用方針は、単なる技術競争ではなく、今後のPCユーザー体験全体の方向性を左右する要素でもある。特に、生成AIがエンターテインメントと実用性の双方に及ぼす影響が拡大する中で、どのアプローチが主流となるかは、ハードウェア性能だけでなくエコシステム全体の構築力にも依存してくる。市場がこの分野に対してどのような成熟を見せるか、引き続き注視する必要がある。

Source：TechSpot