Appleは、前面および背面に映像を表示可能なiPhone、Mac、Apple Watchなどに適用される全面ガラス筐体の設計に関する特許を取得した。特許「12265670」は、Appleが2014年以降積み上げてきた一連の関連特許の集大成であり、筐体全体を複数のガラス面で構成する構造が特徴である。

特許図では、透明な六面体や八角柱の筐体が例示され、各面にディスプレイを設けることで、ユーザーがデバイスを反転させた際にインターフェースが自動的に切り替わる機能や、背面・側面を入力装置として活用できる可能性が示されている。また、力の加わり方に応じて側面が反応する機構も記載されており、デバイス操作の直感性向上が視野に入る。

Appleは同日に3件のデザイン特許も取得しており、本特許の商用展開に向けた準備が一層本格化しているとの見方もある。

全面ガラス筐体がもたらすハードウェア設計の再定義

Appleが取得した特許「12265670」は、iPhoneやMac、Apple Watchにおいて前面・背面・側面を含む筐体全体をガラスで構成する設計を対象としており、これまでの素材や構造に基づく端末設計の前提を覆すものといえる。

特許図26A〜26Cには、六面体のすべての面にディスプレイが配置された構成が描かれ、操作や表示の一体性を追求した設計意図が示されている。さらにMac Proの例では、八角柱の筐体において各面がガラスで構成され、視認性と機能性を両立させる可能性が想定されている。

また、本特許では側面・背面のディスプレイをタッチ感知あるいは圧力感知デバイスとして用いる技術も記述されており、従来はフロント面のみに限定されていた操作領域が端末全体へ拡張されることになる。

これにより、物理ボタンに依存しない新たなユーザーインターフェース設計が可能となり、製品設計全体の自由度が飛躍的に高まる。Appleが同日に3件のデザイン特許も取得した背景には、ガラス筐体の実装に向けた構想が既に進行中であることを示唆する側面がある。

入力と表示が融合するユーザー体験の新次元

特許図53B〜53Cでは、ユーザーがデバイスを反転させた際、ユーザーインターフェースが自動的に背面に切り替わる機構が描かれている。これは、前後のいずれの面も「主表示面」となり得る柔軟な表示制御技術を意味しており、従来のデバイスにおける「前面・背面」の固定的な概念に再考を迫るものとなる。

加えて、図51A〜51Bには、表面ディスプレイの映像が背面まで連続的に拡張される様子が示されており、映像表現の没入感を高める構造的工夫が見て取れる。

一方で、こうした全方向型のインターフェースは、デバイスの利用環境や操作習慣に応じた新たなUX設計を必要とする。たとえば、手に持ったまま側面を押すことで音量調整やスクロールなどの操作が可能となる一方で、意図しない入力を防ぐ設計上の工夫が不可欠となる。

Appleが目指すのは、あらゆる角度・向きから情報にアクセスし、自然な動作で操作可能なインタラクションの統合であり、その先にあるのは「筐体全体がインターフェース」であるという未来像に他ならない。

Source:Patently Apple