元IBMリサーチのメンバーが設立したEmergence AIは、自然言語による指示のみで業務用AIエージェントをリアルタイムに自動生成・編成する新システムを発表した。

このプラットフォームは「再帰的知能」を中核に据え、タスクに応じたエージェントを即時に構築し、必要に応じて自律的に自己増殖・自己学習を行う。LLMによるコード生成と自律エージェント技術の融合を通じて、ETL処理やデータ分析などの業務フロー全体をコード不要で自動化できる構造となっている。

OpenAIのGPT-4.5やAnthropicのClaude 3.7 Sonnetなどとも統合可能で、LangChainやMicrosoft Autogenといった主要フレームワークとも連携。企業内モデルや外部エージェントの統合にも対応し、エンタープライズ自動化の標準基盤化を狙う。


自律型オーケストレーターがもたらす業務自動化の新機軸

Emergence AIの新プラットフォームは、テキスト入力に基づきエンタープライズ業務に特化したAIエージェントをリアルタイムで生成・編成する。タスクを評価し、既存のレジストリから適切なエージェントを呼び出すだけでなく、必要に応じて新たなエージェントを即時作成。さらに、関連業務を先回りして処理するバリアント生成にも対応することで、高度な業務連携を実現する。

エージェント間の統合は完全に自律的に行われ、ユーザーはコード記述不要でマルチエージェントシステムを構築可能。中核をなす「再帰的知能」は、オーケストレーターが自身の限界を認識し、解決不能な課題に対して自律的に新たな目標を設定・達成する構造を取る。Emergence AIはこの特性を、エンタープライズにおける自律性の飛躍的進展と位置づける。

このアーキテクチャは、単なる自動化ツールではなく、業務の内在的構造を動的に理解し、エージェント自身が最適化に関与するという点で画期的である。生成されるエージェントの多さによる複雑性についても、タスク達成に近づくにつれ収束し、より汎用的なエージェントに統合されていく設計により、運用の持続性が担保されている。

LLMとエージェント融合による「エージェント的コーディング」の可能性

Satya Nitta氏は、Emergence AIの構想を「エージェント的コーディング」と定義し、今後の数年間を形づくる中核技術と捉えている。背景には、大規模言語モデル(LLM)が持つコード生成能力への注視がある。GPT-4.5やClaude 3.7 Sonnetなど、主要LLMは強力な生成性能を有するが、生成されたコードは自己検証や修正の責任を持たないという根本的限界がある。

Emergence AIはこの問題に対し、LLMが生成したコードを自律エージェントが実行・検証・修正する構成を提示する。ここでは生成と行動が分離されず、ひとつの連続体として統合されることで、従来のオートメーションとは異なる次元の問題解決能力が発揮される。コードの質ではなく、課題解決というゴールに向けた全体設計が重視されている点が注目に値する。

この「エージェント的コーディング」アプローチは、LangChainやMicrosoft Autogenといったフレームワークとの統合性、さらには企業独自モデルや外部エージェントとの相互運用性の確保によって、拡張可能性と持続性を併せ持つ。コード中心の開発文化から、意図と行動を即時に接続する新たな実装様式への転換点として捉えるべき動きである。

Source:VentureBeat