米Hims & Hers Healthは、エリリリーのブランド医薬品「Zepbound」の販売を自社の遠隔医療プラットフォームで開始したと発表し、株価は5.3%上昇して31.10ドルで取引を終えた。同薬はFDAが先月、模倣薬の流通を禁止したことにより希少性が高まり、各社が対応を迫られる中、Himsは正規品の提供に踏み切った形だ。

これによりHimsは、Zepboundに加え、ノボノルディスクの糖尿病治療薬「Victoza」の有効成分リラグルチドのジェネリック版も提供する。競合するTeladocやLifeMD、Roも同様にZepboundの取り扱いを開始しており、肥満治療薬市場をめぐる競争は今後さらに激化する可能性がある。

FDAの決定がもたらした市場構造の変化

3月に米食品医薬品局(FDA)がチルゼパチドを有効成分とする模倣薬の流通を禁止したことで、肥満治療市場の供給構造は一変した。これまで市場に出回っていたコンパウンド薬(混合薬)の多くは、Zepboundの代替として価格優位性を武器にしていたが、正規ルートでの供給が安定したことでその存在意義は大きく揺らいだ。特にHimsのような遠隔医療を軸とする企業にとっては、模倣薬への依存から脱却し、信頼性あるブランド医薬品の提供へと方向転換を迫られるタイミングであった。

今回HimsがZepboundを正規品として取り扱うと発表したことは、価格競争から価値提供型モデルへの転換を象徴する動きである。ライバルのTeladoc Health、LifeMD、Roといったテレヘルス企業も同様にZepboundの提供に乗り出しており、この流れは単なる一企業の戦略転換にとどまらない。FDAの判断がいかに業界全体のビジネスモデルや顧客対応の質に影響を与えているかが浮き彫りになっている。

顧客にとっても、出所の明確な正規医薬品へのアクセスは、治療の安心感を大きく高める要素である。混合薬からブランド品へのシフトが進むことで、今後は価格と信頼性のバランスが企業競争力を左右する重要な軸となりそうだ。

Zepbound導入がHimsにもたらす長期的な影響

Zepboundの取り扱いはHims & Hers Healthにとって単なる薬剤追加ではなく、中長期的な戦略転換を示す重要な一手である。同社は2月に自宅でのラボ検査サービス導入を発表し株価を一時押し上げたが、以降は記録高から54%近く下落していた。今回のZepbound提供開始は、その下落基調に歯止めをかける材料として、株式市場に強く反応された。4月1日には株価が前日比5.3%上昇し、31.10ドルで取引を終えている。

Zepboundは月額349ドルからとされ、自費診療でも需要が見込める高価格帯の製品である。これを自社プラットフォームで提供することにより、Himsは収益性の高いセグメントを押さえる可能性を持つ。さらに、同時に提供を開始したノボノルディスクのVictozaと同成分のリラグルチドのジェネリック薬も含め、複数の選択肢を用意することで、患者の個別ニーズに応える柔軟性を確保している。

ただし、同社とエリリリーの間に正式な提携関係は存在しないとされており、Zepboundの処方はあくまでライセンスを持つ医療提供者を通じた形に限られる。したがって、今後は法的・制度的な整合性とともに、サービスの医療的質の担保が問われる局面も想定される。単なる価格競争ではなく、長期的な信頼構築が企業価値を決する要因となるだろう。

Source:investors business daily