米国財務省は4月5日、すべての連邦機関による暗号資産の保有状況報告を基に、国家レベルでのビットコイン準備体制の全容を初めて明らかにする見通しだ。これはトランプ前大統領による3月6日の大統領令に端を発し、戦略的ビットコイン準備金(SBR)および「デジタル・フォートノックス」構想の具体化を目指すものとされる。
上院議員や政府関係者の発言によれば、米国はかつて最大で40万BTCを保有していたが、その多くがすでに売却された可能性があり、今回の開示は保有実態の検証と将来的な価格影響を占う指標となる。デジタル資産市場が制度的に統合される過程で、この開示は米国の政策姿勢を占う試金石となる可能性があり、投資家や市場関係者の注視が続く。
戦略的ビットコイン準備金の設立背景と政策的狙い

トランプ前政権が3月6日に発令した大統領令は、アメリカの国家戦略における暗号資産の役割を明示的に格上げした点で注目に値する。これにより、連邦政府のすべての機関はデジタル資産の保有状況を30日以内に財務長官へ報告する義務を課され、4月5日の監査完了がその節目となる。財務省は、この報告を受けて「戦略的ビットコイン準備金(SBR)」および「デジタル資産備蓄」を国家資産として管理する方針を示しており、刑事・民事によって没収されたBTCの長期保有体制が整えられつつある。
この構想は、SBRを米国版「デジタル・フォートノックス」と見なす動きと連動している。すなわち、金融システムの変化に備える準備金としての役割を果たすと同時に、国際通貨体制における戦略的優位の確保を意図するものとも読み取れる。伝統的な金保有に代わる形でのビットコイン蓄積は、資産価値の保存のみならず、国家のサイバーセキュリティや経済的自立の確保とも結びついている。特に、米国内でのBTC取得経路の多くが没収に由来している点において、取引による市場影響を最小限に抑えた備蓄という形が成立しつつある。
売却済みとされるBTCの規模とその影響
共和党のシンシア・ルミス上院議員は、3月19日に開催されたデジタル資産サミットでの発言において、前政権下で米国が保有していたビットコインの大部分がすでに売却された可能性を示唆した。その発言によれば、かつて米政府は約20万BTCを押収資産として保持していたが、どの時点でどれほどが売却されたかは公式には確認されていない。加えて、大統領デジタル資産諮問委員会のボー・ハインズ事務局長も、かつては約40万BTCを保有していたが半分程度が現在の相場よりはるかに低い価格で手放されたと証言している。
この機会損失は、今のレートで換算すれば170億ドル相当にのぼるとされ、国家の資産運用としては大きな失策であった可能性がある。ただし、それは結果論に過ぎず、当時の売却判断には予測不能な市場変動リスクが影響していたとみられる。一方で、こうした過去の対応が今後の政策見直しにつながるとの期待もある。すなわち、今回のSBR設立は単なる保有報告にとどまらず、米政府が再びBTCを中長期的な資産として位置づけ直す可能性を示唆しているともいえる。米政府が今後どのような取得方針を打ち出すかによって、市場の動向は大きく左右される局面に入った。
監査開示が暗号資産市場に与える心理的インパクト
BTC IncのCEOでありトランプ政権の顧問も務めるデビッド・ベイリー氏は、4月5日の監査結果が「最近の価格変動に対する答えを与えるかもしれない」と指摘している。市場関係者にとって、米国政府が保有するビットコインの正確な数量とその運用方針が公にされることは、価格形成における極めて重要な材料となる。特に、想定よりも多く保有していると判明すれば、国家によるBTCの戦略的価値が裏付けられたとして価格上昇の契機になりうる。一方、想定より少ない場合は、過去の売却がもたらした機会損失への批判とともに、今後の再取得を巡る思惑が広がる可能性もある。
このような政府レベルでの情報開示は、暗号資産市場の成熟度を測るバロメーターにもなり得る。制度的枠組みの中でBTCが正式に「準備金」として扱われることになれば、他国政府や機関投資家にも影響を及ぼし、資産ポートフォリオの再構成を促す動きが広がる可能性がある。ただし、今回の報告はあくまで保有状況の開示に過ぎず、今後の取得計画や売却戦略についての明言がなければ、市場は一時的な過熱に留まる恐れもある。今後の情報開示と政策方針の整合性が、暗号資産の信認形成にとって決定的な鍵となる。
Source:Bitcoinist.com