2025年4月2日、テスラは第1四半期の納車台数を前年同期比13%減の33万6,681台と発表し、生産台数も同16%減と厳しい結果となった。年初来で株価は30%下落し、時価総額は8,635億ドルへと縮小している。

一方、売上高や利益は前年比で増加し、充電インフラや自動運転分野では拡大が進む。営業キャッシュフローも改善し、現金保有額は短期負債を大きく上回るなど財務の安定感は維持されている。

6月には完全自動運転型のロボタクシーを展開予定で、OptimusやDojoスパコンなど非自動車領域での技術投資も注目を集める中、アナリストの評価は分かれており、今後の株価動向は慎重な見極めが求められる。

業績悪化が示す需要停滞と競争激化の現実

テスラが2025年第1四半期に報告した納車台数は33万6,681台であり、前年同期比で13%の減少に転じた。加えて、生産台数も36万2,615台と、前年の43万3,371台から後退しており、販売と供給の双方に陰りが見られる。これは単なる一時的な落ち込みではなく、数四半期にわたり継続してきた下降トレンドの延長線上にある。

こうした動きは、競争が激化するグローバルEV市場の中でテスラが直面している構造的なプレッシャーを浮き彫りにする。BYDなど中国勢の台頭や、各国政府によるEV補助政策の変化、消費者需要の成熟も影響していると考えられる。結果として、かつて1兆ドル超の時価総額を誇ったテスラは、現在8,635億ドルまでその価値を減じており、株価は年初来で30%下落している。

こうした数値の変化は投資家心理にも強く作用しており、成長性を軸に評価されてきた企業像に対する再評価が始まっている可能性がある。短期的には期待よりも失望が先行する局面にあることを、今回の業績は如実に示している。


財務の底堅さと非自動車領域への投資が支える成長余地

テスラは主力の車両納車台数こそ前年を下回ったものの、収益面では対前年同期比で2%増の257.1億ドルを確保し、1株当たり利益も0.73ドルと前年を上回った。営業キャッシュフローは48億ドルと堅調で、年間では150億ドルに達する見込みだ。加えて、現金保有額は366億ドルに上り、149億ドルの短期負債を十分にカバーする内容となっている。

注目すべきは、こうした財務的な安定性を背景にテスラが進める多角化戦略である。完全自動運転技術を用いたCybercabおよびRobotaxiのローンチが6月に控える中、自動運転領域での先行性を活かす動きが本格化している。加えて、ヒューマノイドロボット「Optimus」や自社開発のAIスパコン「Dojo」による新規事業も進行中で、いずれも数千億〜数兆ドル規模の市場を視野に入れる。

こうした非自動車分野への挑戦は、EVメーカーという枠を超えた企業価値の再定義につながる可能性を秘めており、長期的には市場の評価軸そのものを転換させる契機となるかもしれない。短期の業績悪化とは対照的に、中長期視点ではテスラの成長余地はなお大きく開かれている。

Source:Barchart