ドナルド・トランプ前大統領が、自身が筆頭株主を務めるトランプ・メディア(DJT)の株式約20億ドル相当を売却可能とする書類をSECに提出した。提出は息子ドナルド・ジュニアの管理する信託を通じて行われ、他のインサイダー売却も対象に含まれている。
同社株は年初来高値から55%も下落しており、売却の可能性が市場にさらなる不安を呼び込んでいる。トランプ氏は売却を否定しているが、収益の低迷と財務赤字が目立つ現状に加え、株価売上高倍率は1,000倍超と異常値にある。
Truth Socialや新サービスTruth+の利用拡大も見込めず、アナリストの関心も希薄な中、トランプ・メディアは投資対象として極めて不安定な立ち位置にある。
トランプ氏の株式売却申請と市場の即時反応

2024年4月、ドナルド・トランプ前大統領がトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)の保有株を最大20億ドル分売却可能とする書類を証券取引委員会(SEC)に提出した。この株式は、トランプ氏の息子であるドナルド・トランプ・ジュニアが運営する信託を通じて保有されており、今回の申請には他の社内関係者による売却の選択肢も含まれている。
この動きが報じられた直後、TMTGの株価は急落。年初来高値からの下落率は55%に達し、市場は明確に警戒感を強めた。ナスダック上場企業である同社が「現時点で売却の計画は存在しない」と声明を出したものの、巨大株主による放出可能性が市場に与える心理的影響は小さくなかった。
ただし、トランプ氏自身は「金銭を必要としていない」と繰り返し発言しており、直ちに売却が実行される保証は存在しない。書類提出が即行動に結びつくものではない点を冷静に読み取る必要がある一方、巨額株主の一挙一動が株価に直結する事実を、今回の事例は如実に物語っている。
トランプ・メディアの財務構造と過熱した評価の乖離
トランプ・メディアは2024年にわずか362万ドルの売上を計上しながら、同年の純損失は4億100万ドルに膨らんだ。この数字は、同社の事業モデルがいまだ安定的な収益を生み出せていない現実を突きつける。中核事業であるTruth Socialや、同年始動したストリーミングサービス「Truth+」は、利用者拡大の兆しを示していない。
にもかかわらず、TMTGの株価売上高倍率(P/S比)は実に1,188倍に達しており、実態に見合わぬ株価水準が形成されている。これは収益性ではなく、話題性や政治的影響力に基づく期待先行の評価と見ることができ、通常のファンダメンタル分析が通用しづらい状況にある。
さらに深刻なのは、ウォール街の主要アナリストが同社をカバーしていない点である。金融コミュニティの関心の低さは、情報流通の希薄化と流動性不足につながり、ボラティリティの上昇や売買の偏りを招きやすい。実体の伴わない評価と、分析の不在が重なる構図は、TMTG株を極めて不安定な立場に置いているといえる。
Source:Barchart