GoogleはAI戦略の中核であるGeminiプロジェクトにおいて、長年チームを率いてきたシシー・シャオ氏の即時退任を発表し、後任にGoogle Labs責任者ジョシュ・ウッドワード氏を据えた。ウッドワード氏はLabsの職務を維持しつつ、Geminiの指揮も兼務する体制となる。
この人事は、DeepMindのCEOデミス・ハサビス氏のメモによれば、「Geminiアプリの次なる進化に集中するため」とされており、Gemini 2.5 Proが示す学術・実用両面での飛躍的成果に対応した布陣とみられる。
シャオ氏は19年にわたりGoogleに貢献し、BardからGeminiへの転換期を担ったが、今後は一時的にAI関連業務を離れ、新たな役割での復帰が見込まれている。
Gemini刷新の背景にあるモデル進化と社内評価の変化

GoogleがGeminiチームのリーダー交代に踏み切った背景には、Gemini 2.5 Proの登場がある。この新モデルは学術的なベンチマークにおいて他のAIモデルを凌駕する性能を示し、LM Arenaに代表されるユーザー評価でも高得点を獲得した。
こうした成果が社内の雰囲気を一変させ、戦略の見直しと新体制への移行を後押ししたとされる。モデルの性能は依然として実験段階にあるが、すでに一定の信頼を得つつあり、将来的なプロダクト統合への加速が視野に入っている。
ウッドワード氏の登用も、Google内部でのAI活用の重層的展開に対応する動きと考えられる。Google Labsを率いてきた同氏は、プロトタイピングと実験的技術の市場投入に豊富な実績を持つ。
BardからGeminiへの移行期を経て、より製品に近い応用段階に進むなかで、開発と事業の接続を担う存在として適任と判断されたとみられる。刷新のタイミングがGemini 2.5 Pro発表直後であった点も、社内における技術への手応えと今後の方針転換が密接に結びついていることを示唆している。
シャオ氏の退任とウッドワード体制が意味する組織再編の方向性
19年間にわたりGoogleに在籍し、2022年からチャットボット開発を率いてきたシシー・シャオ氏の退任は、BardからGeminiへのブランド統合という一連の過渡期における節目と位置づけられる。
シャオ氏はChatGPTの登場でAI業界が激変する中、トランスフォーマーの開発元であるGoogleとしての存在意義を守る役割を果たした。Bard初期のリリースから、2023年末にGeminiブランドへ移行するまでの流れは、GoogleのAI部門にとって試練の連続だったが、その基盤づくりにおいて彼女の貢献は大きかった。
そのうえで、現在の焦点が「Geminiアプリの進化」である点から見れば、開発初期を担う人材から、プロダクト志向のリーダーへの交代は組織上の必然とも読み取れる。
Google Labsを統括するジョシュ・ウッドワード氏は、現職を維持したままGeminiを兼務することとなり、技術開発と製品戦略の一体化を推進する構えである。この動きは、AI部門の再編というよりも、部門横断的な連携によってGeminiの事業展開を加速させるというGoogle全体の意思表示と受け取るべきである。
Source:Ars Technica