アメリカン・エキスプレス(Amex)は、社内のITチャットボットや旅行支援ツールに生成AIを本格導入し、顕著な業務効率化を実現した。2023年10月の導入以降、ITトラブル対応における人手介入が約40%減少し、AIによる自己解決率が飛躍的に向上した。
旅行領域では、5,000人のトラベルカウンセラーのうち85%以上が、AI支援により提案の質と対応速度が向上したと回答。単なる情報提供にとどまらず、顧客の履歴や嗜好を加味したパーソナライズ提案が可能となっている。
同社は社内で500件以上のAI導入候補を検討し、現在は70件超を実装済み。正確性と検証性を重視した設計思想のもと、安全性と一貫性を両立させたAIインフラの整備が進行中である。
ITチャットボット改革がもたらした40%のエスカレーション削減

アメリカン・エキスプレス(Amex)は、2023年10月より社内ITチャットボットに生成AIを本格導入し、従業員からの問い合わせに対して段階的かつ対話的なサポートを実現した。
従来の自然言語処理モデルであるBERTに代わり、クローズドソースの生成AIを統合することで、問題の本質を引き出しながら最適な対応策を提示する設計へと刷新した。その結果、人手による対応が必要となるエスカレーションの件数は40%減少し、8万人の従業員が日常的に直面する技術的課題の解決にかかる時間も大幅に短縮された。
AIはリンクの羅列ではなく、解決策そのものを提示することに重点を置き、ユーザーが再び業務に戻るまでの導線を明確にした。AmexのEVP兼CTOであるヒラリー・パッカー氏は、「チャットボットが答えを直接提示するようになったことで、生産性が向上した」と述べている。
実際のところ、Wi-Fi接続の不具合やノートPCの起動トラブルといった頻出課題に対しても、ユーザーに質問を投げかけながら自己解決へと導く設計は、多忙な業務環境において現場の負担を大きく軽減している。
この取り組みは、AI導入が単なる業務効率化に留まらず、社内のITインフラ全体の質を底上げする可能性を示唆している。特に、煩雑なサポート対応に伴うフラストレーションが減少したことで、従業員の集中力や満足度にも影響を与えていると考えられる。
トラベルカウンセラー支援ツールが実現した提案力と効率性の両立
Amexが導入した「トラベルカウンセラー・アシスト」は、5,000人の専任スタッフを支援するAIツールであり、85%以上のユーザーがその有効性を認めている。これは、単なる観光地情報の検索ツールではなく、顧客の過去の利用履歴や趣向、さらにはリアルタイムの混雑状況や店舗の営業情報までを統合し、パーソナライズされた旅行提案を可能とする仕組みである。
特に、Centurionやプラチナカードを保有する富裕層への対応においては、情報の正確性と即応性が不可欠であり、AIによる下支えは極めて実用的な価値を持つ。
バルセロナの観光案内の直後に、ブエノスアイレスのレストラン予約といった広範な知識を即座に求められる業務において、人間の記憶や瞬発力には限界がある。その点で、AIが最新かつ網羅的な情報を即時に提供し、担当者がそれを顧客に最適化して届けるという分業構造は極めて理にかなっている。ヒラリー・パッカー氏は「AIが提示するのは“検索結果”ではなく“あなたに最適な旅程”だ」と強調している。
一方で、この仕組みが完全自動化ではなく、人間との協働を前提にしている点も見逃せない。AIが収集・整理した情報を、担当者が状況に応じて取捨選択し、文脈に合った提案に落とし込むことで、Amex独自のホスピタリティが保持されている。これは、単なるAI導入にとどまらず、人的知見とテクノロジーを融合させた「知的支援モデル」として注目される。
Source:VentureBeat