iOS向けエミュレータ「Delta Emulator」が、バージョン1.7のアップデートによりNintendo DSのオンラインマルチプレイ機能を実装した。MelonDSコアを用いて構築されており、WiimmfiなどのコミュニティWFCサーバーとの接続を簡素化する仕様となっている。

App StoreおよびAltStoreの全ユーザーに展開され、マリオカートDSやポケモン ブラック/ホワイトなどがiPhone上で他端末とクロスプレイ可能となった。AndroidやDS本体のユーザーとも接続できる点が特筆される。

AppleがApp Storeにおけるエミュレータ制限を緩和した流れの中での今回の実装は、iOS環境下でのレトロゲームプレイに新たな可能性をもたらす一歩として注目される。

Delta Emulatorが拓くクロスプラットフォーム対戦の可能性

Delta Emulatorは、iOS上でNintendo DSタイトルのオンライン対戦を実現する初の主要アプリケーションとして注目を集めている。特にWiimmfi、WiiLink WFC、AltWFCといった非公式サーバーを活用することで、複雑な接続設定を回避し、ユーザーはわずかな手順でオンラインマッチングが可能となった。

この設計は、従来必要とされたDNS設定やサーバー手動登録といった障壁を大幅に緩和するものである。さらに、iPhoneユーザーがAndroid端末や実機のNintendo DSとリアルタイムに対戦できる点は、従来のモバイルエミュレーションでは実現されていなかった価値を提供する。

具体的には「マリオカートDS」や「メトロイドプライム ハンターズ」「ポケモン ブラック/ホワイト」など、元々Wi-Fi機能を備えたタイトルでの接続性が再構築されており、往年の体験を再現可能としている。

このようなクロスプラットフォーム環境の登場は、モバイルゲームにおけるノスタルジー需要を刺激すると同時に、プラットフォームの垣根を越えたユーザーコミュニティの再構築を促すものとなる。ただし、この環境は非公式サーバー上に成り立っており、法的な位置づけや今後の安定性については引き続き留意が必要である。

Appleの方針転換とエミュレーター文化の拡大

近年、AppleはApp Storeにおけるアプリ審査ガイドラインの一部を緩和しており、これがDelta Emulatorのようなアプリの正式公開を後押ししている。従来、iOS端末でエミュレータを使用するにはジェイルブレイクやAltStoreなどによる非公式インストールが不可欠であったが、現在では正規ルートからの入手が可能となったことにより、より広範なユーザー層が利用できる状況が整った。

この流れは、2024年のEU市場におけるサイドロード解禁の影響も無視できない。iOSデバイスは以前より高いセキュリティポリシーを維持してきたが、アプリの多様性とユーザー選択の自由が求められる中で、従来の閉鎖的な方針が見直されつつある。

現在、Delta Emulatorのほか、ProvenanceやPPSSPP、RetroArchなどもApp Storeに並んでおり、かつてのニッチな嗜好が表舞台へと移行しつつある様相を呈している。ただし、JIT(Just-in-Time)コンパイルの非対応により、高度なエミュレーションが求められるDreamcastなどは依然としてサポート外であり、今後の技術的進展やAppleのさらなる開放姿勢が求められる点は否めない。

レトロゲーム文化の持続と進化の鍵は、単なる懐古主義ではなく、環境整備とユーザー体験の質的向上にかかっている。

Source:Android Authority