Googleは2025年3月に高度なAIモデル「Gemini 2.5 Pro」を公開し、同年初頭に発表した「Gemini 2.0 Flash」に続く形で、わずか数ヶ月での連続投入を行った。特にコーディングや数学分野で卓越した性能を示すとされるが、安全性評価を示す「モデルカード」などの公開が追いついておらず、業界内外から批判が高まっている。

同社は過去に透明性の確保と責任あるAI開発を強調していたにもかかわらず、現在ではその原則と実際の運用に乖離が生じているとの指摘がある。AI開発を巡る国際的な規制や標準策定が進む中、Googleの方針転換は不信感を招きかねない状況にある。

これに対しGoogle側は、安全性は依然として最優先事項であるとし、今後改めて文書を公開する意向を示しているが、過去の履行実績と矛盾する点も多く、誠実な対応が求められている。

Geminiシリーズの急速展開と未公開の安全性報告

Googleは2025年3月に高度な推論能力を有する「Gemini 2.5 Pro」を発表し、3ヶ月前に登場した「Gemini 2.0 Flash」に続く形で連続投入を実現した。いずれもコーディングや数学などの特定領域において業界最先端とされる性能を誇るが、これらのモデルにはモデルカードやシステムカードといった安全性に関する詳細な文書が添えられていない。これにより、情報開示の不備や透明性の欠如が専門家の間で懸念されている。

Googleの製品責任者トゥルシー・ドシ氏は、Gemini 2.5 Proの公開を「実験的」と位置づけたうえで、正式な一般提供に先立ってフィードバックを収集する段階であると説明している。これにより、現時点でモデルカードを公開していないという姿勢を正当化しようとする意図が見えるが、Gemini 2.0 Flashに関しては既に一般提供されているにもかかわらず、報告書は依然として未公表のままである。

2019年にモデルカードの提唱企業として先陣を切ったGoogleが、現在ではその実践から乖離している状況は看過しがたい。情報開示を行わずともモデルの商用化が進むことは、他社にとっても悪しき前例となる可能性がある。

AI開発と規制の摩擦が浮き彫りにするガバナンスの課題

AI業界では現在、OpenAIやAnthropic、Metaといった主要プレイヤーが新モデルの公開に際し、システムカードや利用リスクの文書を必ず提示する体制を整えている。これらの取り組みは、学術研究や政策立案者による評価の基礎資料ともなり、技術の健全な進化に資するものとされている。一方、Googleは2023年時点で、重要なモデルについては政府に対する報告を実施すると表明していたが、実態はそれに及んでいない。

米国ではAI開発者向けの報告基準を法制化しようとする動きが見られ、特にカリフォルニア州の「SB 1047」などが注目を集めたものの、テック業界の強い反発により否決された。

このことは、企業側の自己規律への依存が依然として大きいことを意味しており、強制力を伴う枠組みの欠如が浮き彫りとなっている。AI Safety Instituteが提案するガイドラインの策定も進められているが、トランプ政権下での予算削減によりその実効性には疑問が残る。

こうした状況のなかで、Googleが透明性よりも開発スピードを優先させている現状は、規制の限界と民間主導の限界を同時に示している。規制と技術革新のバランスをどのように取るかという問いが、AIガバナンスの本質的な課題として浮上している。

Source:TechCrunch