フォードは「From America, For America」と銘打ち、米国市場での販売促進策として6月2日まで従業員価格を一般消費者にも適用する。背景には、ドナルド・トランプ前大統領が提唱する25%の輸入車関税が市場に与えた動揺がある。
関税によるコスト増加がフォードの利益全体を圧迫する可能性が指摘され、CEOのジム・ファーリーも収益への深刻な影響を認めている。アナリストは同社株の割高感を警戒しており、PERは7.4倍でGMの4.1倍と対照的だ。
配当利回り6.25%と高水準を維持するフォードだが、今後の配当維持には不確実性もある。ウォール街では現時点で「中立」評価が大勢を占めており、投資判断は慎重を要する局面にある。
トランプ関税がフォードの収益構造に与える現実的打撃

ドナルド・トランプ前大統領が提唱する輸入車とその部品への25%関税は、フォードの事業構造に直接的な圧力を加えている。フォードCEOのジム・ファーリーは、この関税が収益性に壊滅的な影響を及ぼす可能性があることを公に認めており、UBSのアナリストは「すべての利益を消し去る」水準に達しうると指摘している。これは、グローバルに部品を調達し米国内で製造を行う既存モデルが、関税コスト増により機能不全に陥るリスクを示している。
実際、2024年第1四半期の米国販売台数は前年同期比1.3%減と小幅ではあるが減少に転じており、これは関税発動前である点に注意を要する。従業員価格の適用拡大も、消費者の買い控え心理を和らげる一時策に過ぎず、抜本的な収益構造の再編には至っていない。関税がこのまま継続もしくは拡大する局面では、現行の販売・生産体制そのものが再設計を迫られる。
短期的には在庫一掃と販売下支えを狙った販促策が注目されるが、中長期的には関税に対抗しうる調達網や製造拠点の見直しが避けられない状況である。現時点でフォードは、政治リスクが直接業績に跳ね返る脆弱な構造を抱えていると言える。
配当水準の持続性と株価評価に漂う疑念
フォード株は現在、約6.25%という高い配当利回りを誇っている。この水準は配当投資を重視する市場参加者にとって魅力的に映るが、その継続性には慎重な視線が注がれている。Seymour Asset Managementの創業者ティム・シーモア氏は、関税の影響が継続または拡大した場合、2025年には配当の削減も視野に入ると見ており、フォード株の保有動機のひとつが揺らぎつつある。
一方でフォード株の現在のPERは7.4倍とされており、過去12か月で30%以上下落したにもかかわらず、割安とは見なされていない。これに対してゼネラルモーターズ(GM)は4.1倍と大幅に低く、比較においてフォードの評価は不利に働いている。収益性の差もGM有利とされ、シーモア氏も「フォードはGMに比べて利益構造が脆弱であり、低評価は妥当だ」と明言している。
投資判断としては、配当だけに注目する姿勢は危うい。配当は過去の業績に基づくものであり、将来の収益見通し次第で変動し得る。現在の株価水準が維持されているのは、単に市場全体が様子見に傾いている結果であり、業績や外部環境に動きが出れば株価にも敏感な変化が訪れる可能性がある。安定配当を前提とした投資には、慎重な再評価が求められる局面である。
Source: Barchart