AIブームの象徴とされるNvidiaの株価が、過去2年で1,000%超の急騰から一転し、史上高値から30%以上の下落を記録している。中でも、同社が発表したスタートアップLepton AIの買収計画に対し、著名な空売り投資家ジム・チャノスが「再販業者の買収は在庫調整のサインであることが多い」と批判し、警戒感が広がっている。

一方で、Nvidiaの事業基盤は依然として堅調であり、AIチップ市場での支配的地位を維持しながら、2026年度には売上430億ドルを見込むなど、成長見通しは明るいとするアナリストの声も多い。今後の株価の行方は、買収の意図とその実効性、そして市場がそれをどう受け止めるかに大きく左右されることになりそうだ。

Lepton AI買収が示すNvidiaの戦略転換とリスク構造の変化

Nvidiaは、AIチップ市場での支配的地位を背景に、ハードウェア中心のビジネスモデルから一歩進んだ事業構造への転換を模索している。その象徴が、カリフォルニア州クパチーノのスタートアップ、Lepton AIの買収計画である。

同社はわずか設立2年でNvidia製のAIチップを搭載したサーバーを顧客に貸与しており、買収額は数億ドル規模と報じられている。Nvidiaにとって、この取引は製品の再販を超え、サーバーレンタルというサービス領域への本格参入を意味する。

しかし、ジム・チャノス氏の懸念は根深い。彼は「再販業者の買収は往々にして在庫や売掛金の処理を目的とする」とし、取引の実態に疑義を呈している。この指摘は、会計処理や在庫管理上の透明性に問題が潜んでいる可能性を示唆するものである。たとえ取引額が小規模でも、その象徴的意味合いは大きく、Nvidiaが今後も垂直統合を強めていく兆しと捉えられかねない。こうした動きは成長志向の表れである一方、投資家には警戒を促す材料となっている。

成長を支える実績と市場予測 依然として強気なアナリスト評価

Nvidiaは、2017年度の売上69億1,000万ドルから、2024年度には609億ドルへと大幅に拡大させた。この7年間での成長は異例の水準であり、同期間における粗利益率の上昇も58.8%から75%へと著しい。さらに、1株当たりの調整後利益(EPS)は0.08ドルから2.99ドルへと跳ね上がり、財務の安定性と収益性の両面において市場の期待を裏切っていない。第4四半期には393億ドルの売上を計上し、2026年度第1四半期には430億ドルが見込まれている。

アナリスト44名中38名が「強い買い」を推奨している事実からも、短期的な調整局面にもかかわらず、中長期の成長に対する信頼感が根強いことが分かる。今後5年間の年平均成長率は18.6%とされ、フリーキャッシュフローも2025年の607億ドルから2030年には1,930億ドルに拡大する見通しだ。

FCFマージンの上昇とともに、同社の時価総額は2030年初頭には5.79兆ドルに達する可能性がある。ただし、このような予測はあくまでも前提条件が揃った場合のシナリオであり、地政学リスクや競合の台頭が不確実性として残る。

Source: Barchart.com