トランプ前大統領が「解放の日」と銘打ち発表した新関税政策は、全貿易相手国に10%、中国に34%、EUに20%、一部新興国には最大50%の課税を行う大規模な相互関税措置である。これにより米国市場は混乱し、S&P500は4.3%下落、VIXは31%上昇と強いリスク回避姿勢が示された。
こうした中、アナリストが注目するのがTJX CompaniesとCarvanaの2銘柄である。TJXは過剰在庫を低価格で仕入れられる業態の強みを活かし、株価は市場が下落する中でも上昇し、今後も安定したリターンが期待されている。一方Carvanaは新車価格高騰による中古車需要の高まりと、国内調達体制による関税回避という二重の追い風を受ける構造を持つ。
TJXが示す逆風下の価格優位性と在庫調達力

TJX Companiesは、TJ MaxxやHome Goodsといったディスカウント小売ブランドを展開する企業であり、世界的なサプライチェーンの混乱や関税ショックの中にあっても、その調達戦略が市場で評価されている。
2024年4月3日時点で、S&P500が4.3%下落する一方、TJXの株価は堅調に推移し、直近1年間では29.2%の上昇、年初来では4%超の伸びを示している。Jefferiesをはじめとするアナリスト22名が「強い買い」との評価を下し、目標株価は平均で140.22ドルとされており、12%の上昇余地が見込まれている。
背景には、他小売業者が余剰在庫に苦しむ中、TJXがそれらを割安で買い付け、自社店舗で販売するサイクルを確立している点がある。この価格優位性は、インフレや関税によって消費者の価格感度が高まる局面において、特に大きな強みとなる。また、同社の予想PERは27.7倍と、業界平均と比較すると高水準ではあるが、過去5年間の同社のレンジ内ではむしろ割安水準と評価できる。
関税が広範囲に影響を及ぼす中、在庫調達能力と消費者向け価格競争力を両立させる企業は希少であり、TJXはその好例といえる。今後の市場動向次第では、さらに注目度を高める展開もあり得るだろう。
Carvanaに映る中古車市場の構造変化と供給戦略
中古車販売を手がけるCarvanaは、米国内での在庫調達というビジネスモデルによって、新たに導入された輸入車部品への25%関税の影響を直接的には受けにくい立場にある。2024年第4四半期には売上高35.5億ドル、1株あたり利益0.56ドルと、前年の赤字から一転して黒字を計上し、販売台数も33%増加するなど業績改善が鮮明であった。
直近では市場全体の動揺を受け株価が短期的に17%下落したが、過去1年間で134%上昇しており、中長期的な成長期待は依然として高い。新車価格の上昇が消費者の購入判断に変化を与える中、より手頃な価格帯の中古車への需要が拡大する構造は、Carvanaにとって追い風となり得る。さらに、海外からの輸入依存度が低い点が、関税リスクを回避する明確なアドバンテージとなっている。
ただし、同社株はボラティリティが高く、投資判断には慎重さも求められる。アナリストの評価は「適度な買い」とされ、目標株価は280ドルと、12か月で50%超の上昇余地があるとされるが、今後の需給や価格動向の変化によっては軌道修正の可能性もある。経済全体の購買行動に敏感なこの業種において、柔軟な供給戦略と国内志向の強さがCarvanaの持続的成長の鍵となろう。
Source: Barchart