2025年第1四半期、米株式市場はトランプ政権再登板直後に数兆ドル規模の資産を失った。一方、ウォーレン・バフェットはわずか3ヶ月で220億ドルの資産を増やし、世界富豪ランキングで10位から6位へと浮上した。

背景には2024年後半の早期売却と、保有するバークシャー・ハサウェイ株の14.76%の上昇がある。S&P500が6.25%下落する中でのこの成果は際立っている。ただし、米中貿易摩擦の再燃を象徴する「解放の日」以降、バークシャー株が下落に転じており、今後の純資産の行方には不確実性も残る。

バフェットの戦略的売却とバークシャー株の急伸が支えた資産増加

ウォーレン・バフェットが2025年初頭に記録した220億ドルの資産増加は、偶然の産物ではない。2024年後半の広範な売却活動により、市場の調整局面を事前に回避したバフェットは、結果的に2025年の混乱を最小限に抑えることに成功した。株式市場が政権交代後に大幅下落する中、彼の保有資産の中核を成すバークシャー・ハサウェイの株式(BRK.B)は、同期間で14.76%上昇。終値は537.72ドルに達し、S&P500が6.25%下落した状況とのコントラストが際立った。

バークシャー株の上昇は、同社の堅調な財務体質と、多様なポートフォリオに対する市場の信認の表れでもある。短期的な利益追求を避け、長期的視点に基づく投資方針を貫いたことが、他の富豪たちが軒並み損失を出す中で、バフェット一人が資産を伸ばした要因といえる。ただし、同様の市場環境下で同業他社の株価が軒並み沈んだことを鑑みれば、バークシャー株の上昇は必ずしも市場全体の流れに沿ったものではない。むしろ、投資家心理の不安定さのなかで、バフェットというブランドへの信頼が株価を支えたという側面がある。

解放の日が示唆する今後の不確実性と資産変動リスク

2025年4月初頭、「解放の日(Liberation Day)」と呼ばれる米中の新たな相互関税措置の発表が、市場に新たな不安定要素をもたらした。延長取引でバークシャー・ハサウェイの株価は2.09%下落し、価格は526.50ドルへと後退。この動きは、好調を維持してきたバフェットの純資産にも波紋を及ぼす可能性がある。関税強化は企業の収益圧迫につながるため、広範なポートフォリオを持つバークシャーにも直接的な影響が及ぶ恐れがある。

バフェットの投資哲学は短期的な変動に惑わされない姿勢を重視するが、市場全体が過敏な反応を示す局面では、その保有資産も無傷では済まない。特に現在のように政策と市場心理が複雑に絡み合う状況下では、株価は理論的価値よりも感情的に動く傾向が強まる。仮に今後、地政学リスクや追加の関税発表が相次げば、バークシャー株が再び下押し圧力を受ける可能性は否定できない。今回の調整が一時的か、それとも新たな下降トレンドの端緒となるかは、今後の市場動向次第である。

Source:Finbold