AI向けGPU市場を牽引してきたNVIDIAの株式が、HSBCのフランク・リー氏により「買い」から「ホールド」へと格下げされた。背景には、価格支配力の鈍化や四半期決算の伸び悩み、Blackwell供給網の不透明性など複合的な要因がある。

また、中国のDeepSeekのような代替ハードウェアの台頭や、クラウド大手による設備投資の縮小懸念も、今後の成長シナリオに影を落とす。トランプ前大統領による関税への言及は限定的で、懸念材料の本質はより構造的な問題にある。事実上、NVIDIA株は1月の最高値から約30%下落しており、今後の上昇余地は利益成長の鈍化と評価倍率の限界によって制約される可能性が高いと指摘されている。

市場支配力の揺らぎと収益拡大の限界

HSBCのアナリスト、フランク・リー氏によるNVIDIA株の格下げは、AIブームの恩恵を受けてきた同社の価格支配力に陰りが見え始めたことに起因する。かつて同社は、AI向けGPU市場において圧倒的な技術力とシェアを武器に高価格を維持してきたが、直近の決算では平均販売価格の上昇が見られず、利益成長の牽引役としての価格戦略が機能しにくくなっている。

さらに、2023年以降の決算で見られた収益予測の上振れ幅も徐々に縮小しており、投資家の期待値を上回る成長パターンには陰りが差している。Blackwellシリーズの供給体制に対する不透明感も加わり、短期的な株価反発を支える要素が限定的であることが浮き彫りになった。

かつては業績修正によって株価の勢いを保っていたNVIDIAだが、今後は業績と評価倍率の両輪が重荷となり、過去のような高評価を維持するのは容易ではない状況にある。

クラウド投資と中国リスクの波紋

NVIDIA株が直面する下方圧力の一因として、米国クラウド企業の設備投資縮小懸念と、中国市場における新興勢力の台頭が挙げられる。特に、DeepSeekが低価格帯のAIモデル訓練を実現可能にするという観測は、同社製品に対する長期的な需要の鈍化リスクを意識させる要因となっている。

トランプ前大統領による中国向け半導体規制や関税の可能性は依然として不確実性を残すが、リー氏はH20チップの中国展開においても持続的な需要が見込みにくいと見ている。これにより、NVIDIAの対中戦略の先行きには不安が広がりつつある。

また、クラウド大手がAI関連の設備投資を継続できるかどうかは市場全体の関心事であり、2026年以降の需要持続性に対する懸念は、今後の成長期待を冷やす材料として作用する可能性がある。全体として、地政学的要因と産業構造の変化がNVIDIAの評価に新たな重しとなっている。

Source:msn