2025年3月のAmazon USにおける販売データで、AMDは自作PC向けCPU市場でシェア78.74%を獲得し、Intelを大きく引き離した。中でも注目されるのが、発売から3年が経過したRyzen 5 5500の健闘で、同モデルはわずか83ドルという価格ながら3,000個以上を売り上げ、Core Ultra 200Sシリーズ全体よりも販売数で上回った。
収益面でも、AMDは約781万ドルとIntelの5倍近い数値を記録。平均販売価格の高さからも、高性能な3D V-Cacheモデルや手頃な6コアCPUがバランスよく支持されていることがうかがえる。特にCore Ultra 7 265Kの販売台数がわずか500個程度にとどまるなど、Intelの最新世代は厳しい船出となっている。
Ryzen 5 5500が3年越しに再評価 価格と性能のバランスが呼び起こした需要

Ryzen 5 5500は2022年に登場した6コア12スレッドのエントリークラスCPUでありながら、2025年3月のAmazon USでは3,000個以上を売り上げるという異例の結果を記録した。販売価格はわずか83ドルと非常に手頃で、対応するAM4プラットフォームも既に成熟していることから、総コストを抑えた構成を求める層に強く支持された。販売台数では、Intelの最新世代であるCore Ultra 200Sシリーズ全体を上回り、収益面でも重要なポジションを確保している。
販売台数の背景には、単に価格だけでなく、現行の用途において過不足ない性能が提供されている点も見逃せない。一般的なゲームプレイや軽めの動画編集、日常的なマルチタスク処理であればRyzen 5 5500でも十分であり、極端な性能競争よりもコストパフォーマンスを重視する傾向が強まっている。最新アーキテクチャの恩恵が活かされにくい軽作業中心の環境では、旧モデルの復権という現象も今後さらに増える可能性がある。
Core Ultra 200Sシリーズの苦戦と価格帯の分断
Core Ultra 200Sシリーズの売上が振るわない中、最も売れたとされるCore Ultra 7 265Kですら500個程度の販売にとどまった。さらに、他のモデルについては販売実績が確認できないものもあるという。このシリーズはLGA1851ソケットに対応しており、新規にマザーボードを用意しなければならないことも導入の障壁になっていると見られる。性能向上が期待される一方で、価格と環境構築コストの両方が重くのしかかる結果となっている。
加えて、手頃な価格帯の製品が事実上市場に存在しない点も見逃せない。Intelの中でも比較的コストパフォーマンスに優れていたi5-12400Fなどは依然として一定の支持を得ているものの、Core Ultra系はその後継としての役割を果たしきれていない印象がある。自作市場においては、新製品というだけでは消費者を引き付けるのが難しくなっており、性能・価格・アップグレードの柔軟性が揃った製品が選ばれる傾向が今後も続くと見られる。
高価格帯でも売れるAMD Ryzen X3Dシリーズの強さ
Ryzen 7 7800X3DやRyzen 7 9800X3Dといった3D V-Cache搭載モデルが、合計9,000個以上を売り上げている点も興味深い。平均販売価格がAMD全体で247.24ドルと、Intelの209.91ドルを上回っているにもかかわらず、多くの購入者が高価なモデルを選んでいることは、性能に対する明確な価値を感じている証左といえる。特に、X3Dシリーズはゲーム向けの最適化が進んでおり、フレームレートや応答性の向上に直結することから、性能重視の層に訴求力が強い。
この動向からは、単純な価格競争ではなく、用途に最適化された機能が支持を集める傾向が読み取れる。予算に余裕がある構成でも「コストに見合う性能かどうか」が明確であれば、消費者は価格以上の満足度を見込んで選択している。逆に言えば、単に高価なだけのCPUでは手が伸びず、強みが明確な製品のみが生き残る時代に突入しているとも言えるだろう。
Source:Club386