AMDは、高性能CPU「Ryzen 9 9800X3D」および「9950X3D」に関する故障問題について、ASRockと共同で調査を実施し、原因が古いBIOSとメモリの互換性にある可能性を指摘した。特にASRock製マザーボードでの発生が多く、ユーザーの間では物理的損傷をともなう深刻な問題として広がっていた。
影響を受けた一部ユーザーは、最新BIOSを使用していたと主張しており、公式発表との食い違いも見られる。AMDはすでに修正を行ったBIOSの提供を完了し、問題が解決しない場合は個別にサポートするとしている。ただし、明確な損傷をともなう不具合の原因はなお未解明な部分も残されている。
繰り返される9800X3Dと9950X3Dの故障報告とその背景

Ryzen 9 9800X3Dおよび9950X3Dに関する故障報告は、特に2024年後半から急増していた。ExtremeTechによると、100人以上のユーザーが突然のCPU損傷を経験しており、その多くが数日から数週間の通常使用を経て発生している。故障はASRock製マザーボードで多く確認されていたが、他社製品でも発生例があるため、ハード単体の欠陥とは言い切れない状況にある。
AMDとASRockは共同で調査を実施し、古いBIOSによるメモリ互換性の不具合が主因であると発表。具体的には、初期のBIOSバージョンでメモリとの動作安定性に問題があり、これがCPUに異常な電圧やタイミング負荷を与えていた可能性があるとされる。ただし、すでに最新BIOSがリリースされており、AMDはその導入を呼びかけている。
しかしながら、一部のユーザーは故障当時すでに最新のBIOSを適用していたと主張しており、問題の根本が単なる互換性トラブルにとどまらない可能性も否定できない。物理的損傷という結果からは、何らかのハード的リスクが残っているとの見方もある。原因の特定には、さらなる透明な検証が求められる。
メモリ互換性だけで説明しきれないX3Dの不安定性
AMDが指摘したメモリ互換性の問題は、確かに初期BIOSにおいて存在していた不具合であり、アップデートによって改善されたことは技術的にも妥当だろう。ただ、実際に故障が発生したユーザーの中には、すでに最新BIOSを使用していたケースも複数存在する。この点において、メモリ周りだけが唯一の原因と断定するのは時期尚早といえる。
また、報告されている症状の多くが「POSTに失敗する」「正常動作後に突然故障する」といったものに集中しており、典型的な初期不良とは異なる特徴を持つ。これは、CPUまたはマザーボードの設計上、電力供給や保護機構の面で何らかの課題を抱えている可能性も示唆している。とりわけX3Dチップはキャッシュ構造に特殊性があり、発熱や電力制御において繊細な調整が求められることから、ソフト面だけではなくハード面の限界も影響しているかもしれない。
ASRock側がユーザーの構成を再現するためにパーツを自費で収集・検証している姿勢は注目に値するが、根本的な安心感を得るには、今後さらなる詳細な技術解析と情報公開が不可欠である。
Source:ExtremeTech