著名投資家ジム・クレイマーがCNBC番組内で、NVIDIA(NASDAQ:NVDA)がもはや「ミーム株」と化していると発言し、投資家心理に波紋が広がっている。トランプ前大統領による過激な関税政策を受け、市場は予想以上の混乱に見舞われた。とりわけ中国との貿易摩擦は激化し、AIやデータセンター関連銘柄に対する信認も揺らぎつつある。
加えて、クレイマーは中国を「陰湿なタコ」とまで表現し、グローバル市場への不正な進出を非難。一方で、関税は消費者価格の上昇を招くとの見方も示した。NVIDIAは第1四半期に前年比262%の売上成長を記録するも、短期的には過熱感と価格変動に翻弄されるリスクが高まっている。
長期的視点での成長ポテンシャルは依然として高いが、今後の株価動向には投機的側面が強まる可能性があると見る向きも多い。
NVIDIAが「ミーム株」とされた背景と市場の混乱

ジム・クレイマーは、NVIDIA(NASDAQ:NVDA)の株価がもはや“ミーム株”と化していると述べ、市場に衝撃を与えた。この発言は、NVIDIAがもはや実績や業績といった本質的価値よりも、投資家の投機的な熱狂によって価格が大きく変動する局面にあるという認識を示すものである。背景には、トランプ前大統領が4月初頭に打ち出した関税強化策があり、市場の不確実性を一気に増幅させた。特に対中政策は厳格を極め、クレイマー自身も「ミートアックス(解体用の斧)」と表現するほど強烈な措置であった。
この関税措置により、テクノロジー銘柄の代表格であるNVIDIAへの売り圧力が高まり、AIやデータセンターといった成長分野に対する楽観論が急速に後退した。さらに、クレイマーは中国企業DeepSeekの技術台頭にも触れ、NVIDIAの高価格帯チップが競争力を失うリスクを示唆。こうした懸念が「ミーム化」の土壌となり、実体価値から乖離した値動きを助長している。
市場の過熱感に対して投資家が冷静さを取り戻せるかどうかが、今後の株価動向を左右すると考えられる。
強気の業績とAIシフトの現実
NVIDIAは2024年第4四半期において、売上高が前年同期比262%増の260億ドル、1株あたり利益が462%増の6.12ドルという驚異的な成長を記録した。さらに、2025年第2四半期の売上予測も280億ドルと強気の見通しを示し、市場予測を上回る数値を提示している。この急成長の背景には、生成AIの普及によって加速するデータセンター需要と、それに不可欠な高性能GPUへの依存がある。
創業者ジェンスン・ファンCEOは「1兆ドル規模のデータセンターインフラが汎用型から加速型へと移行する」と述べ、AI導入があらゆる産業に波及することを強調している。こうした構造変化は中長期的なNVIDIAの成長を裏付けるものであるが、短期的には価格の急騰が投機色を帯び、実態との乖離が懸念されている。
強固なファンダメンタルズと市場の期待が交錯する中、AI関連株の中でもNVIDIAは象徴的存在となったが、その分リスクも比例して高まっている。
トランプ関税と投資心理の急転
ジム・クレイマーは、トランプ氏が導入した「報復的関税」が市場の想定を超える規模であったと語り、その影響を「消費国家である米国にとって致命的」と位置づけた。関税対象国の輸出品に広く課された追加関税は、企業業績への打撃にとどまらず、消費者物価の上昇、インフレ加速という二重の圧力となってのしかかっている。クレイマーは「株式市場の幸福など眼中にない」と述べ、トランプ氏が政治的意図で経済合理性を無視していると警鐘を鳴らした。
この政策転換は、投資家心理に瞬時の冷却効果をもたらし、「リセッション(景気後退)不可避」との見方が急速に広がった。テクノロジー分野の象徴銘柄であるNVIDIAも例外ではなく、好業績にもかかわらず、短期的には投げ売りにさらされる不安定な地合いに置かれている。
市場が政治的リスクをどう織り込むかによって、今後のテック株全体の方向性が左右される局面に入っているといえる。
Source:insider monkey