NVIDIA株に対する投資家の売却行動が止まらない。NY大スターン校のダモダラン教授は、AI関連の「バズワード効果」が既に失効しており、実際の収益化が伴わない限り市場の評価は厳しくなると指摘した。売却はジェンスン・フアンCEOの発言にも反応せず、決算発表日にも一時上昇後すぐに利益確定売りが続発。
さらにアマゾンやアップル、インテルなどが独自開発するAIチップとの競争が、TSMCの3nm生産枠を巡って熾烈化している。収益の約半分を占めるクラウド事業者の設備投資減速も痛手で、成長期待に応える構造転換が求められる中、短期的な株価上昇は限定的と見る向きが増えている。
AI成長神話の転換点 NVIDIAに立ちはだかる収益化の壁

AI関連株を牽引してきたNVIDIAだが、その高成長を支えてきた期待感に陰りが見え始めている。NYUスターン校のアスワス・ダモダラン教授は、AIバブルの実態について「収益を生まないまま設備投資だけが先行している」と警鐘を鳴らした。確かに、NVIDIAのGPUは依然として市場を席巻しており、「Hopper(H100)」や後継の「Blackwell」など技術革新も続いているが、AI製品やサービスが企業にもたらす実益が十分に可視化されていない現実がある。
これまでの株価上昇は、将来的なAI市場の爆発的拡大を織り込んだ部分が大きく、現状の収益構造とは乖離していると見る声が増えている。特にクラウド大手がAI関連インフラ投資の再考を始めたことは、NVIDIAの売上構成に直接影響を及ぼす。2025年第1四半期のガイダンスでも、売上成長は前四半期比で9.4%増にとどまり、過去の12%増から鈍化。利益率も71%まで低下する見通しだ。
これらの数値は、今後もAIの成長が続く前提に立つ投資家にとって警戒材料となる。過剰な期待が剥落しつつある中で、NVIDIAが“実態”に裏打ちされた成長戦略を提示できるか否かが、次の局面を決めることになる。
競争環境の激変 台頭する自社開発AIチップの衝撃
NVIDIAの独走状態に変化の兆しが見えてきた。特に注目されるのが、AmazonやApple、Intelなどの巨大企業が自社製のAI半導体開発に乗り出している点である。Amazonは「Trainium2」チップを開発し、演算能力とコスト効率の両面でNVIDIA製品に対抗可能とされている。AppleもBroadcomと組み、独自のAIサーバープロセッサを準備中との報道があり、これまでNVIDIAに依存していたAIインフラの選択肢が広がりつつある。
加えて、TSMCの3nmプロセスノードに各社が殺到していることも、NVIDIAにとって逆風だ。AppleやQualcommが先行して製造能力を確保しようとする中、NVIDIAの製造枠が制限される懸念がある。NVIDIAもTSMCに依存しており、生産キャパシティが技術革新や製品供給のボトルネックとなる可能性がある。
これまで同社は市場シェアの高さと技術優位によって競争を退けてきたが、今後は「製品力」だけでなく「価格競争力」や「供給安定性」がより重視される展開が予想される。競争構造が大きく変わる中、NVIDIAが新たな脅威にどう対応するかが、同社の中長期的な成否を左右する。
Source:yahoo finance