ドナルド・トランプ前大統領が発表した新関税「解放の日」により、仮想通貨市場は約1,400億ドルの資金流出に見舞われた。特に短期保有者を中心にビットコインが大量に売却され、18,930 BTC(約15.6億ドル)が市場に放出された。

保有期間1年半未満の投資家による売却が大半を占めたが、ロング/ショート比率の変化も顕著で、市場の心理は一気に弱気に傾いた。著名な強気派もコモディティへの資金シフトを示唆する中、明確な反発材料が見当たらない現状では、投資判断に一層の慎重さが求められる局面である。

トランプ前大統領の新関税が仮想通貨市場に与えた即時的打撃

4月3日、ドナルド・トランプ前大統領が打ち出した「解放の日」と銘打たれた新たな関税政策の発表により、仮想通貨市場から約1,400億ドルが一気に失われた。この動きは特に短期保有のビットコイントレーダーに直撃し、18,930 BTC、金額にして約15.6億ドルが数時間のうちに市場に流出した。アリ・マルティネス氏がX(旧Twitter)に公開したチャートによれば、1年未満の保有層が中心であり、中でも1年~1年半保有していた層の売却が最多で、9,097 BTCに上った。

この事実は、従来からビットコインのボラティリティの高さが指摘されてきた中で、地政学的リスクや政策要因が直ちに市場に波及することを如実に示すものとなった。特定の層が連鎖的に売却に走った背景には、短期トレーダーが市場の変化に過敏に反応する構造的な性質があり、加えて高値圏にあったBTC価格が一つの利確のタイミングとしても作用したと考えられる。今回のような急落が短期筋にとって損切りではなく合理的な撤退と映る限り、仮想通貨市場の脆弱性は解消されないままである。

ロングポジションからショート優勢へ 市場心理の転換点を示す指標

仮想通貨市場では、過去12時間のロングとショートの比率が劇的に変動している。具体的には、それまで拮抗していたロング50.14%対ショート49.86%という構図が、トランプ関税の発表を受けてショート55.32%対ロング44.68%に逆転した。この動きは、トレーダーが中期的な価格下落を見越して売り姿勢に転じたことを示しており、市場の心理的な転換点となっている。

こうしたポジション変化は、単なる投機的判断にとどまらず、基礎的なリスク回避の姿勢が強まっていることを反映していると見るべきだろう。著名なビットコイン強気派であるロバート・キヨサキ氏も、銀などの伝統的資産への分散を示唆する発言を行っており、トレーダー層の中でも仮想通貨一辺倒の姿勢から戦略的撤退が始まっている可能性がある。いかに高値を更新していたとしても、外部からの政治的リスクが市場全体を一気に冷やすことは、今回の事例で改めて浮き彫りとなった。

回復の兆しなき相場環境に求められる冷静な判断力

4月3日時点でのビットコイン価格は81,910ドルであり、24時間で3.43%、そして売却が集中したタイミングからも1.06%の下落となった。高水準にあったBTC価格が短期間で調整局面に入ったことは、過去の急落局面と類似しており、特に強い反発材料が見当たらない現状では、さらなる下落リスクが否定できない。

このような環境下においては、短期的な値動きに踊らされず、長期視点で市場全体の構造変化を注視する姿勢が不可欠である。特に、過去にも何度か繰り返されてきた「売り一巡後の急反発」に期待をかける動きがあるが、今回のような政策的要因に端を発した下落は回復の起点が見えづらい。トランプ氏の政治的影響力が再び経済市場に及ぶ可能性を考慮すると、仮想通貨を取り巻く環境はより複雑化しつつあり、戦略的な資産配分の見直しが迫られていると言えよう。

Source:Finbold