2024年4月2日、トランプ前大統領が打ち出した「リベレーション・デー」の相互関税発表を契機に、暗号資産市場はわずか数時間で1,400億ドル(約21兆円)規模の下落を記録した。特にビットコインは一時87,000ドルに達した後、83,000ドル台まで急落。市場の期待と反転が交錯する中、仮想通貨の脆弱性が浮き彫りとなった。
金価格がこの混乱の最中に3,162ドル超まで高騰した事実は、資産回避の動きと暗号資産の「安全資産」説への疑義を映し出す。株式市場も連動して調整局面に入り、改めてデジタル資産と伝統資産の相関が注目された。
相互関税発表で1.4兆ドル相当のデジタル資産が急落した構造的要因

2024年4月2日、トランプ前大統領が掲げた「リベレーション・デー」にて発表された相互関税政策が、デジタル資産市場に深刻な影響を与えた。暗号資産全体の時価総額は、当日の午後に2.77兆ドルに達した直後、わずか4時間で2.61兆ドルへと急落し、TradingViewのデータによれば、12時間以内に最終的に1,400億ドルの減少に転じた。特にビットコインは87,000ドルを超える高値を記録したものの、発表直後には83,662ドルまで値を下げ、投資家心理の急変を物語る。
この動きの背景には、市場がトランプ発言を事前に好感し、リスク資産への資金流入が活発化していたという過剰な楽観がある。しかし、相互関税の具体的な内容が「予想以上に保護主義的」と受け止められたことで、逆回転が生じた。資産価格の高騰と暴落が数時間内に交錯したことは、暗号資産が依然として外部要因に過敏に反応し、成熟した金融商品としての耐性に欠けていることを浮き彫りにしている。市場の流動性の薄さと過度な短期資金の集中が、ボラティリティの高騰を招いたとも指摘されている。
金が示した安全資産としての地位と暗号資産への懐疑
混乱の最中、金(ゴールド)の価格は一時3,162ドルを突破し、相場が不安定化する局面での「退避先」としての性格を明確に示した。デジタル資産市場が急落する中で、金価格が短時間で上昇に転じたことは、伝統的な安全資産が依然として市場の信認を得ている証左といえる。一方、ビットコインなどの暗号資産は「デジタル・ゴールド」との異名を持ちながらも、株式市場と類似の値動きを見せ、真のリスクヘッジ手段とはなり得なかった。
暗号資産が下落した同時期に、米国株もプレマーケットで3%前後の調整を受けたという事実は、両市場の相関性を裏付ける材料となった。これはつまり、暗号資産が「独立した価値の保存手段」として機能していない現実を示している。金融政策や地政学的リスクに対する感応度の高さが、むしろ株式と同様の投機的資産であることを浮かび上がらせる。今回の金の上昇と暗号資産の急落という対照的な動きは、デジタル資産に期待される役割とその実態との間にあるギャップを、改めて市場参加者に突きつけた。
Source:Finbold