トランプ政権が発表した新関税政策により、Appleは最大で年間330億ドルの純利益を失う可能性が指摘されている。価格転嫁による消費者離れと、自己吸収による収益悪化の板挟みにある中、Morgan Stanleyの分析では、関税免除の可能性は20%にとどまるという。

同社はすでに一定数の在庫を抱えており短期的には価格維持が可能とされるが、中長期的にはインドでの製造拡大といった策も効果が限定的であるとの見方が強い。加えて、5,000億ドル規模の米国投資計画が進行中であるにもかかわらず、免除制度がAppleに不利に働いているという指摘もある。

市場評価の変動や政策的な不確実性が、テック大手の経営判断に重大な影響を与える局面となっている。

年間330億ドル減益の構図と、Appleが直面する二重苦

Morgan Stanleyによる分析では、Appleは新関税の影響で年間最大330億ドルもの純利益を失う可能性があるとされている。この損失は、単なるコスト増にとどまらず、消費者需要の鈍化や競争力低下に直結する。Appleが取るべき選択肢はいずれも厳しく、製品価格を引き上げれば購入意欲の低下を招き、価格据え置きを選べば企業としての収益を削る結果となる。

こうした板挟みの状況において、Appleは一定の在庫を活用することで短期的な価格維持を図る可能性があるとされるが、それは一時しのぎに過ぎない。中長期では、製造コストの上昇に伴い、戦略転換を迫られる可能性が高まる。価格競争力を維持しつつ収益を確保するためには、供給網の再構築や新興市場でのシェア拡大といった多角的な対応が必要となる。

このような構図は、グローバル企業が地政学リスクと通商政策にどのように向き合うべきかを示す好例とも言える。特に、製品構成や市場展開が高度に国際化された企業にとって、政策変更の影響は不可避であり、事業戦略における柔軟性と迅速な意思決定が試される局面といえる。

免除率20%という冷遇と、米国内投資の不発リスク

Appleは今後4年間で5,000億ドルにのぼる米国内投資計画を打ち出しているが、トランプ政権の関税政策においてその努力が免除措置に直結していない点が注目に値する。Morgan Stanleyのアナリストによると、Appleが関税免除を得られる確率はわずか20%にとどまる。

これは、免除審査の構造自体がAppleに不利である可能性を示唆しており、制度的なハードルが高い現実を浮き彫りにしている。Appleはカリフォルニア州クパチーノを拠点とする米国企業であり、かつ世界的な技術革新の象徴ともいえる存在であるにもかかわらず、政治的決定によって不利な立場に置かれている。

これは、米国企業であることが必ずしも政策的な優遇につながらないことを示す象徴的なケースとも言える。また、免除を得られなかった場合、Appleは今後の設備投資方針や雇用戦略にも見直しを迫られる可能性がある。

巨額の国内投資に対する報いが制度上明確に保証されないのであれば、企業側のインセンティブは鈍化する。こうした動きが米国内の製造業政策全体にも波及する可能性を無視することはできない。

Source:Wccftech