世界最大の上場企業であるAppleの株価が2025年に入り約22%下落した。背景には、生成AIの波への対応の遅れや中国勢との競争激化、デバイス更新サイクルの鈍化、ストリーミング事業の伸び悩みといった構造的課題がある。

一方で、2025年第1四半期の決算では利益と売上が市場予測を上回り、特にサービス部門は過去最高の263億ドルを記録。アナリストの目標株価は現水準から31%の上昇余地を見込んでおり、中程度の買い推奨が続く。

目先の逆風は強いものの、過去5年で200%超の成長を遂げた実績や、堅調な決算内容を踏まえれば、現在の調整局面は長期投資家にとって一考の余地がある水準ともいえる。

AI対応の遅れと中国勢の台頭がAppleの競争力に影を落とす

Apple株の年初来22%の下落は、市場全体の調整という側面に加え、AI分野での出遅れと中国勢の攻勢という構造的課題の存在を浮き彫りにしている。特に音声アシスタント「Siri」の進化が他社に比べて鈍化しており、生成AI市場においてGoogleやMicrosoftに対する劣位が鮮明になっている。

さらに、中国市場においてはHuaweiをはじめとする地場企業がiPhoneのシェアを急速に侵食し、Appleの収益構造に対する圧迫要因となっている。製品部門の売上が市場予想を下回った事実は、この地政学的・技術的逆風を裏付ける結果とも言える。

過去にはブランド力とエコシステムによって一定の優位性を維持してきたが、AIを中核とした次世代テクノロジーの主導権争いでは、その支配力が揺らぎつつある。単なる業績の一時的な変調ではなく、戦略の再構築が求められる段階に入っていることは明らかである。

決算は予想を上回るも構造的な転換点に直面

Appleは2025年第1四半期決算で、利益363.3億ドル、一株利益2.40ドルを記録し、市場予想の2.36ドルを上回った。また売上高も1,243億ドルと、事前のコンセンサスである1,240億ドルをわずかに超えた。サービス部門の売上は過去最高の263億ドルに達し、製品部門の不振を補う形で全体の数値を押し上げた。

これらの結果は、Appleが単なるハードウェア企業に留まらず、サービス重視の転換を図ってきたことの一定の成果といえる。しかし、製品部門の売上が980億ドルと予想未達であった点は軽視できない。ハードの魅力だけでは成長を維持できない時代に突入したことを示している。

今後、AIとの融合やクラウドベースのサービス強化、サブスクリプションモデルの更なる浸透が鍵を握ることは間違いない。決算結果が市場を一時的に安堵させたとしても、中長期では技術革新とビジネスモデルの両面で転換点に立たされている状況に変わりはない。

アナリストは31%の上昇余地を見込むも慎重な姿勢が求められる局面

Barchartが伝えたアナリストの見解によれば、Apple株に対するコンセンサス評価は「Moderate Buy(中程度の買い)」であり、平均目標株価は251.72ドルと現在価格から31%の上昇余地を見込んでいる。この評価は、Appleのブランド力や財務体質、サービス分野の成長可能性に対する期待感に支えられている。

加えて、年間配当1ドル(利回り0.5%)という安定性も評価材料の一つとなっている。とはいえ、足元のマクロ経済環境は依然として不安定であり、米中間の関税リスクや景気後退懸念、テクノロジー株全体のバリュエーション調整といった下振れ要因も無視できない。

短期的な反発を狙うよりも、構造変化への対応力や今後のイノベーション戦略を慎重に見極める姿勢が必要である。長期視点での保有を検討する場合も、次なる成長の柱が具体化するまでは慎重なスタンスが妥当といえる。

Source:Barchart