Microsoftが世界各地でデータセンター開発の見直しを進める中、Super Micro Computer(SMCI)の成長ストーリーに黄信号が灯りつつある。ハイパースケーラーのAIインフラ投資を追い風に急成長してきた同社だが、株価は過去1年で約70%下落。
2025年度の売上高見通しは最大で60億ドルと堅調なものの、通期予想は下方修正され、利益成長は限定的。需要のタイミング変更やアーキテクチャ刷新といった要因が重なり、バリュエーション水準にも再考を促す材料が揃ってきた。
アナリストの評価は「ホールド」が多数を占める一方で、Microsoftの投資判断次第ではSMCIの中長期的な収益見通しにさらなる揺らぎが生じる可能性も否めない。
データセンター投資の軸足を変えるMicrosoftとその波及リスク

Microsoftは米国、英国、オーストラリアなどで進行中の複数のデータセンタープロジェクトを見直しているとされ、グローバルにおけるAIインフラ投資の減速が現実味を帯びてきた。2024年の設備投資額は800億ドルと過去最大規模に達する見通しではあるものの、構成や重点領域の見直しによって、ハイパースケーラー全体の投資配分が変化する可能性が出てきている。
特にAI関連の先端サーバーを手がけるSuper Micro Computer(SMCI)にとって、顧客の設備投資戦略の変化は事業の根幹を揺るがす要因となり得る。2025年度第3四半期の売上高予想は50億〜60億ドルと高水準を維持しているが、通期では従来の260億〜300億ドルから235億〜250億ドルへと下方修正された。
これはAIサーバーの導入時期のずれや、アーキテクチャの転換による調整が背景にある。急成長に比例して株価も乱高下を見せてきたSMCIにとって、この変調は一過性の問題にとどまらず、中長期の成長力の再評価を市場に促す契機となり得る。設備投資の選別傾向が強まる中で、同社の競争優位性が持続可能か否かが今後の焦点となる。
株価乱高下の裏に潜むバリュエーションと成長期待の乖離
SMCIの株価は1年で70%下落した一方、過去5年での累計リターンは1,400%を超える。急速な成長期待に支えられたバリュエーションがピーク時には過熱感を帯びていたことは否定できず、PERやPSRといった指標は現在でも比較的控えめな水準に留まる。
例えば、予想PERは16.1倍、PSRは1.39倍と、急成長企業としては割安に映る水準である。ただし、それが同社の持続的成長の保証にはならない。同社はAIデータセンター市場の成長と深く連動しており、Microsoftなど主要顧客の設備投資戦略の変化に業績が左右されやすい構造にある。
2025年度第2四半期では売上が前年比54%増と高成長を見せた一方、EPSは前年並みであり、収益性における伸び悩みが顕在化している。株主資本の充実や技術開発への継続的な投資姿勢は評価されるものの、成長のタイミングが予想とずれた場合、相応の評価調整が生じることも視野に入る。
将来的に注力する「直接液体冷却(DLC)」技術の普及が期待される一方で、それが収益面に確実に反映されるには時間を要するとの見方もある。
Source:Barchart.com