ASUSが新たに提供するBIOSアップデートにより、ROG Astral RTX 5080のTGP(総グラフィックスパワー)が従来の400Wから最大450Wへと引き上げ可能になった。これは12.5%の大幅な電力枠拡張に相当するが、その一方でゲーム中のフレームレート向上はわずかにとどまるという。

Tech Powerupの検証によれば、同様に450W対応のGIGABYTE製RTX 5080で得られたパフォーマンス向上はわずか1.8%。発熱や電源への負荷を踏まえれば、得られるリターンは限定的である。

450W対応の新BIOSでROG Astral RTX 5080は何が変わるのか

ASUSが提供した新BIOSにより、ROG Astral RTX 5080のTGPは従来の400Wから450Wへと引き上げ可能となった。この変更はVideoCardzを通じてTech Powerupが報じたもので、電力枠の増加により、理論上はGPUのクロック上限やブースト維持率に余裕が生まれることになる。ただし、それが即座にフレームレートの劇的な向上につながるわけではない。

事実、Tech Powerupが行った検証では、GIGABYTEのGamingモデルを360Wから450Wに引き上げた際のFPS向上率はわずか1.8%にとどまっている。電力増加分のほとんどが発熱や消費電力の増加というコストに吸収されており、実際の描画性能向上には直結しにくい。ROG Astral RTX 5080でも同様の傾向が予想され、450Wに設定したからといってプレイ体験が目に見えて変化する可能性は低いとみられる。

つまり今回のBIOSアップデートは、ハードウェアとしての可能性を広げるものである一方で、活用方法によっては利便性よりも負担が上回るリスクもはらんでいる。

“数値の誘惑”にどう向き合うべきか

高出力対応やTGPの引き上げといった仕様の変化は、スペック上の魅力として強く響く。特に450Wという数値は、ハイエンド志向の層にとって「限界突破」や「完全解放」といったイメージを連想させる要素であり、思わず設定を試したくなる動機にもなり得る。ただし、GPUの世界においては数字が大きければ性能も飛躍するという単純な構図は成立しにくい。

ROG Astral RTX 5080のようなモデルは、設計段階で既に高い効率性と安定性が確保されている。そこにさらに50Wの電力を加えたところで、クロックの天井を引き上げられる場面は極めて限られ、冷却や電源ユニットへの負荷が先行する結果となる可能性が高い。とりわけ一般的な使用環境においては、450Wの設定がもたらすメリットは微細なFPSの増加にとどまり、それ以上に音や熱といった副次的なデメリットが目立つ場合もある。

冷静に考えれば、最大出力設定はベンチマークや検証用の選択肢にすぎず、日常的なゲーミング用途にはアンダーボルテージでの静音運用の方が現実的なバランスを保ちやすい。最適なパフォーマンスとは、数値の高さではなく、使用目的と環境に見合った調整に宿る。

Source:TweakTown