ドナルド・トランプ前大統領による報復関税方針が市場に波紋を広げ、S&P500は6%、ダウは5.2%、ナスダックは5.8%下落し、約6.4兆ドルの時価総額が消失した。
市場全体が急落する中で、BMOキャピタルはファースト・ソーラーに、ゴールドマン・サックスはアマゾンにそれぞれ強気の評価を継続。前者は国内製造回帰の追い風、後者は価格柔軟性と規模の優位性を根拠としている。
関税による短期的な不確実性が残る一方で、両社ともに新たな市場環境下で競争力を発揮する可能性があると指摘された。
関税ショックの中で注目されるファースト・ソーラーの優位性

ファースト・ソーラー(NASDAQ: FSLR)は、東南アジア諸国からの太陽光パネル輸入に平均39%の関税が課されたことを受け、米国内メーカーとして構造的優位に立っている。BMOキャピタルは同社に対して目標株価230ドルの「アウトパフォーム」評価を維持し、国内製造の強化を追い風と位置づける。同社のモジュール平均販売価格(ASP)の上昇も、利益拡大の土台を形成しつつある。
一方で、IRA(インフレ抑制法)施行をめぐる政策不透明感や、インド・マレーシア・ベトナムといった国々からの供給が継続されることによる価格競争は、短期的にはマージンを圧迫する懸念が残る。それでも、輸入品の価格上昇と競争環境の変化は、国内勢にとって長期的にポジティブな影響をもたらす可能性がある。
価格圧力と市場再編の流れが同時に進行する中で、FSLRは製造力と価格戦略を武器に、関税政策によって生まれる空白を埋める存在となる余地がある。ただし、米中貿易摩擦の激化が構造的に継続するかどうかは流動的であり、今後の政策動向によっては成長期待にも変化が及ぶ点に留意が必要である。
アマゾンの競争優位と関税下での柔軟戦略
アマゾン(NASDAQ: AMZN)は、平均18.2%に達する報復関税によるコスト増が懸念される中で、ゴールドマン・サックスは「買い」の評価を維持し、目標株価を255ドルと据え置いた。アナリストのエリック・シェリダンは、50億〜100億ドル規模のEBITへの影響を想定しつつも、同社の規模、価格調整力、ベンダー交渉力をその緩和要因として挙げている。
特に自社販売(1P)商品に焦点を当てた分析では、製品構成の見直しや選択的な値上げにより、マージンの急落を回避する動きが注目される。また、2018〜2019年の関税局面で実証されたアマゾンのマージン耐性は、今回の局面でも一定の示唆を与えている。加えて、「免税措置(de minimis)」の見直しによって、TemuやTikTok Shopなど中国発の新興プラットフォームとの競争負荷が軽減される可能性も浮上している。
こうした構造的強みに加え、市場の再編を先取りしたサプライチェーン戦略の柔軟性が、アマゾンを関税環境下でも堅調なプレーヤーとして維持する要因となっている。ただし、外部環境の変動が想定以上に急激である場合、価格設定や在庫戦略の調整だけではカバーしきれないリスクも否定できない。
Source:Finbold