米国財務長官スコット・ベセント氏は、タッカー・カールソン氏とのインタビューにおいて、金の国際的需要が拡大している背景を解説し、特に中国の急激な買い増しに言及した。中国経済の不振や厳格な資本規制が人民元への信認を揺るがし、金への逃避を加速させているという。

さらに、トランプ氏の関税政策を発端とする貿易戦争と地政学的緊張が、金の物理的移動にも影響を与えたとされ、スイスやロンドンからニューヨークへの大量移送が確認されている。こうした背景のもと、金は法定通貨と異なり国家債務やインフレの影響を受けにくい「価値保存手段」として再評価が進んでいる。

金価格は一時的に3,000ドルの節目を突破した後に下落したが、年初来で15%超の上昇を記録。著名投資家ロバート・キヨサキ氏も、金・銀・ビットコインの分散保有を資産防衛策として推奨しており、現在の不確実な環境下で金の地位は一段と重要性を増している。


金の国際的需要を押し上げる中国経済の不信と資本規制

中国における金の需要急増は、単なる経済的嗜好ではなく、制度的不信に根差している。スコット・ベセント米財務長官は、タッカー・カールソン氏との対話で、中国が深刻な景気後退と資本流出への規制強化に直面している点を指摘し、金への逃避的需要が極めて大きいと述べた。人民元への信認が揺らぎ、国家としての経済的選択肢が限られる中、金は価値保存の最終的な避難先とされている。

特に注目されるのは、中国の制度が通貨の自由な移動や国際投資を制限しており、国内資産の海外退避が困難な環境下にあるという事実である。このような構造において、国民や企業が国内で保有でき、かつ世界的に換金性が高い金を求める流れは、極めて自然な対応といえる。中国以外の国々においても、同様の制度的抑圧が強まれば、金市場の需要構造に再び大きなうねりが生じる可能性がある。

これは単に地政学的な緊張や金融政策に起因する一過性の動きではない。制度そのものへの信頼低下が引き金となった資産防衛行動であり、金というアセットが持つ“制度外”の強靭さが、極めて有効に機能している例である。通貨ではないが通貨以上に通貨的な存在として、金は国家リスクの映し鏡となっている。


貿易戦争と金価格の連動性が示す資産移動の実態

トランプ前大統領の通商政策は、金融市場のみならず実物資産の物流にも影響を及ぼしている。財務長官ベセント氏によれば、米国による関税政策の不透明性が、金の国際移動に大きな変化をもたらしたという。特に注目されたのが、スイスおよびロンドンの保管庫からニューヨークへの大量移送であり、これは金が新たに関税対象となる可能性への早期対策であったとされる。

こうした動きは、金という資産が単なる投資対象にとどまらず、政策リスクに応じた機動的な資産配置の対象となっていることを示唆する。関税が課されるという単純な価格リスクではなく、物流制約や保管地リスクに対する先手の動きであり、これは法定通貨や証券などには見られにくい、金独自の機能である。物理的に移動でき、世界中の市場で取引可能であることが、今なお金を魅力ある手段としている。

一方で、こうした物流の変化は短期的な価格変動にも連動する。4月2日には金価格が3,000ドルの壁を突破し、その後4月4日には2.4%の反落を記録した。だが年初来での15%超の上昇は、戦略的資産移動が需要の下支えとなっていることを示しており、短期の値動きに惑わされない中長期的な視野が必要である。


価値保存手段としての金が再評価される理由

法定通貨が抱える根源的なリスクを前にして、金という無国籍の資産に再び注目が集まっている。ベセント財務長官は、インフレ、政府債務、地政学的な緊張といった外部要因が法定通貨の価値を脅かす中、金はその影響を受けにくいと明言した。特に中央銀行や機関投資家が安定資産として金を選好しているのは、通貨制度への信頼が揺らぐ現代的な状況の反映にほかならない。

加えて、インドのような国々では、金は文化的・実用的価値を併せ持ち、ジュエリーとしての日常的な需要も相まって、単なる投資商品以上の役割を果たしている。これは金の“使われる資産”としての側面であり、経済が不安定な時代においても価値が毀損されにくい根拠となっている。つまり、金は「使える備蓄資産」としての独自性を保持している。

また、ビットコインなど新興の価値保存手段と比較した場合でも、金には圧倒的な歴史的実績と物理的実在がある。ロバート・キヨサキ氏のような著名投資家が、金・銀・ビットコインの三点セットで資産防衛を提唱している点も、金が依然として分散投資の中核に位置づけられていることを裏付けている。テクノロジーの進展がもたらす新資産の波に対しても、金は揺るぎない基準値であり続ける。


Source:Finbold