ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年初頭から急速に現金保有を増加させ、現在その額は過去最高の3,340億ドルに達している。この動きは株式市場が上昇し楽観が広がっていた時期に進行しており、S&P500が10%超の下落を見せた今、その意味合いが注目されている。

バフェットは2008年の金融危機でも類似の戦略で巨額の利益を上げており、今回も市場混乱時に大規模投資へと転じる準備と見られる。株式の純売却と現金の積み増しは、ウォール街に対する明確なシグナルであり、「貪欲と恐怖」の原則に則った行動に他ならない。

投資家が学ぶべき核心は、資金力の有無ではなく、暴落局面における冷静な対応である。慌てて売却に走るのではなく、優良銘柄を信

バフェットが市場の楽観期に進めた現金化の背景

バークシャー・ハサウェイは2022年以降、株式の純売却を続け、2024年初頭からはその動きが一段と加速した。その結果、同社の現金および現金同等物の保有額は1年でほぼ倍増し、現在では過去最高となる3,340億ドルに達している。この現金の蓄積は、市場が上昇基調にあり、多くの投資家が強気に転じていた局面で行われたものである点が注目に値する。

バフェットの有名な格言「他人が貪欲なときに恐れよ」は、まさにこの時期の行動を象徴している。彼は2008年のリーマンショック後にも類似の戦略を採り、金融機関への投資で数十億ドル規模の利益を得た前例がある。今回もまた、経済的混乱に備えての資金確保という読みが働いていた可能性は否定できない。

市場全体が楽観に傾くとき、冷静に逆の行動を取るには確かな信念と経験が求められる。その意味で、今回の現金積み増しは、単なる防衛的措置ではなく、将来的な攻勢への布石とも受け取れる。安値での大量買い付けを可能にする土台が、すでに整えられているという構図である。

株価暴落時に問われるのは資金力ではなく判断力

市場が大きく調整局面に入ると、多くの投資家は不安に駆られ、パニック的な売却に走りがちである。バフェットはそうした心理的弱さこそが最大のリスクであると見ており、実際に「最悪の行動は売ることだ」と繰り返し述べてきた。2008年の金融危機後、彼が割安に買い集めた企業の例はその象徴であり、売却側がいたからこそ、バークシャーが巨利を得ることができた構図がある。

バークシャー・ハサウェイのような資金力を持たない投資家にとって、同様の機会を得るのは容易ではない。しかし、最も大きな差を生むのは資金の多寡ではなく、暴落時の判断力である。自身の信念を持って選んだ銘柄を持ち続ける覚悟こそが、長期的なリターンに繋がる道である。

「これもいずれ過ぎ去る」という一見陳腐にも思える言葉の背後には、市場の循環性に対する深い理解がある。短期的な恐怖に惑わされず、下落局面を耐え抜いた者だけが、次の上昇局面の恩恵を受けられるという事実は、過去の市場が幾度も証明してきたことである。

Source:The Motley Fool