Appleが開発を進めていたスマートホーム向け新製品の発売が、当初予定されていた2025年から2026年以降に延期される可能性が浮上した。Bloombergのマーク・ガーマン氏によると、「Apple Intelligence」やSiriの機能刷新に伴う技術的課題と社内の再構築が主な要因とされる。

この製品は、7インチの正方形ディスプレイを備え、Amazon Echo ShowやGoogle Nest Hubに対抗する新カテゴリとして注目されていたが、AI機能に深く依存する設計が開発の足かせとなっている模様である。発売延期はAppleにとってAI領域への本格的な参入の遅れを意味し、スマートホーム市場におけるプレゼンス拡大にも影を落とす可能性がある。

Siriの刷新がもたらす開発遅延と構造改革の余波

Appleが2026年への延期を検討する要因の中核には、「Apple Intelligence」と連動する新しいSiriの開発難航がある。Bloombergの報道によれば、Appleは既に発表していたSiriの新機能の導入時期を今春から「来年中」へと後ろ倒ししており、音声認識や自然言語処理の改良が間に合っていない実情が浮かび上がる。

加えて、社内の開発チームがこれらの機能をゼロから再構築する方向に舵を切ったことは、単なるスケジュール調整にとどまらず、製品戦略全体の見直しに発展していると見られる。Appleが開発中とされるスマートホームハブは、7インチの正方形ディスプレイを備え、家庭内でのインターフェースとして「Apple Intelligence」に大きく依存する仕様であることから、Siriの遅延は製品の完成度に直結する構造的課題を示している。

さらに、AppleがAmazonやGoogleと異なり、スマートホーム領域への本格的な参入を慎重に進めていることもあり、技術基盤の完成を待たずしてリリースに踏み切る選択肢は現時点で現実的ではない。社内構造改革と技術的課題が並行して進行している今、この延期はAppleにとって単なる戦略的待機ではなく、次の一手を模索する過渡期の象徴とも言える。

スマートホーム市場におけるAppleの立ち位置と今後の展望

当初2025年3月とされていた発売予定は、すでに4月以降へと後ろ倒しされていたが、今回の延期報道により状況はさらに深刻化している。スマートホーム市場におけるAppleの存在感は、すでに先行するAmazon Echo ShowやGoogle Nest Hubに比べて希薄であり、新型ハブの投入はその遅れを取り戻す契機と目されていた。

だが、現時点で2026年まで延期される見通しが浮上したことで、競合との技術的・市場的な距離がさらに広がる可能性がある。この製品が搭載予定とされた「Apple Intelligence」や「App Intents」は、Appleの消費者向けAI戦略の核である。

したがって、本ハブは単なるスマートディスプレイではなく、Appleにとっては新たなユーザー接点となる重要な試金石であったはずだ。しかし、販売面でのインパクトは限定的と見られており、GoogleやAmazonが築いた市場の牙城を崩すには時間と製品ラインの多層展開が不可欠である。

今後Appleがこのエントリーモデルを基盤として、将来的にロボットアームのような高度な機能を備えた製品へと進化させることを視野に入れているとされるが、その道のりは決して平坦ではない。製品戦略の実現性と、社内の技術革新の進度が今後の鍵となる。

Source:9to5Mac