Appleは、Vision Pro向けにユーザーの姿勢や位置に応じて視覚コンテンツのズームレベルを自動調整するシステムに関する特許を米国で申請した。特許番号20250111472では、頭や体の動きに連動して3Dオブジェクトの表示形式が変化する「ボディロック」「チルトロック」などの構成が示されている。

さらに、特許番号20250110551では、仮想環境上でのビジネスプレゼンテーションを支援する新たなアプリの存在も明かされた。これにより、HMDを活用した遠隔会議や没入型の情報共有手法が、今後のワークスタイルに影響を与える可能性がある。

現時点では開発段階にあるが、Appleの空間コンピューティング戦略の一端が垣間見える出願内容となっている。

ユーザーの動きに応じた自動ズーム制御がもたらす操作性の革新

Appleが米国特許商標庁に出願した特許番号20250111472では、Vision Proのヘッドマウントディスプレイ(HMD)において、ユーザーの位置や姿勢に応じて視覚コンテンツのズームレベルを動的に調整する仕組みが明示された。これは、利用者が身体の動きに応じて直感的に表示内容を拡大・縮小できることを意味し、従来の手動ズーム操作からの大きな進化である。

加えて、視界内のオブジェクト表示についても、「ボディロック」「チルトロック」「ワールドロック」「ヘッドロック」といった複数の表示モードが設けられ、ユーザーの動作に応じて表示対象の挙動が変化する点が特筆に値する。

これらの表示方式は、現実空間と仮想空間を融合させるSpatial Computing領域におけるUX設計に直結しており、特に「チルトロック」のように頭部の傾きに反応する制御は、視認性の最適化に寄与する設計といえる。

体験者の直感的な動作に連動する視覚調整が実現されれば、これまでにない没入感と操作の一体感を提供するインターフェースとなりうる。ただし、こうした高度な認識機構はハードウェア側の精度と連携に依存するため、実装の現実性については慎重に見極める必要がある。

仮想空間でのプレゼンテーション支援が暗示する新たな働き方

Appleが申請したもうひとつの特許(20250110551)は、Vision Pro上でのプレゼンテーションアプリケーションの機能に関するものである。公開された資料には、仮想環境内で資料やビジュアルコンテンツを提示するためのUIの一例が示されており、HMDを用いたビジネスシーンでの活用を視野に入れていることがうかがえる。

これにより、従来のPC画面上での発表スタイルから脱却し、仮想空間を用いた動的な情報伝達手法への転換が期待される。仮想空間でのプレゼンは、物理的な制約を超えて資料配置や聴衆との視線共有を自由に設計できるため、表現力の向上に直結する。一方で、聴き手の集中力や視線誘導の設計など、対面とは異なる配慮が求められることも想定される。

特許に明記されたUI設計は、情報提示と視覚的没入感を両立させる意図が見られるが、あくまで開発段階であることを踏まえ、実用化のプロセスには技術面・運用面での検証が不可欠となる。HMDというデバイス特性を前提にしたプレゼン環境の設計が、今後の働き方そのものに変化をもたらす契機となるか注目される。

Source:Patently Apple