トランプ前大統領による突然の高関税発表が引き金となり、S&P500は2日間で10%を超える歴史的な暴落を記録した。ダウ先物も日曜夜に1,400ポイント超の急落となり、週明けの市場不安は一段と強まっている。

こうした混乱の中、木曜日発表のCPIは、インフレ動向とFRBの金融政策見通しを左右する鍵を握る。さらに水曜公開のFOMC議事録では、インフレ圧力への認識や利下げの含意が読み取られ、市場の神経は極度に緊張している。

PPIや10年債入札、失業保険申請件数といった追加データも続き、政策当局の意図と市場の期待が激しく交錯する週となる見通しだ。

歴史的急落の背景にあるトランプ関税とテックセクターへの余波

トランプ前大統領が突如発表した新たな関税措置は、市場のリスク許容度を一気に冷やした。S&P500は木曜日に4.93%、翌金曜日には5.85%の大幅下落となり、年初来で14%もの下落幅を記録。

日曜夜には、ダウ先物が1,400ポイント超の急落、ナスダック先物とS&P500先物もそれぞれ4%下落し、週明けの混乱を予感させた。ホワイトハウスは物議を醸す関税方針を変更する兆しを見せず、市場の不安心理はさらに加速した。

Wedbush証券のDan Ivesは、この関税政策が「経済的アルマゲドン」を引き起こす可能性を示唆。特にハイテク業界では、ドットコムバブル崩壊やリーマンショックを超える衝撃になりかねないと指摘した。

実際、関税によるコスト増とサプライチェーンの混乱は、収益構造の柔軟性に乏しい一部のテクノロジー企業にとって致命的である可能性がある。現状では企業側の価格転嫁も困難であり、利益率の低下は避けられないだろう。

この状況が継続する場合、短期的な調整を超えて、構造的な成長鈍化への懸念が市場に定着する恐れがある。投資家心理の急激な悪化とテック中心のポートフォリオからの資金流出は、今後の米株市場全体のトレンドに重大な影響を及ぼすことになる。

CPIとFOMC議事録が握る金利の針路と市場の分岐点

今週最も注視される経済イベントは、木曜日のCPIと水曜日に公開されるFOMC議事録である。CPIは物価全体の動向に加え、コアCPI(食品・エネルギーを除く)にも注目が集まる。近月のインフレ率は依然として高止まりしており、今回の結果は、FRBによる年内の利下げ判断に直結する可能性を秘めている。予想を上回れば金融緩和観測が後退し、株価に下押し圧力がかかる構図は変わらない。

FOMC議事録では、インフレリスクに対するFRB内部の温度差が明らかになるとみられる。特に、最近の声明で示された慎重姿勢が強まっていれば、市場の利下げ期待は再び冷や水を浴びせられるだろう。金利に敏感なセクター、すなわちテクノロジー、公益事業、不動産などは、これらの情報次第で激しく揺れ動くことになる。

インフレの持続性と労働市場の強さが再確認されるようであれば、FRBが高金利を長期間維持するシナリオも現実味を帯びてくる。これにより、バリュエーションの高い成長株から割安株への資金移動が加速する可能性も否定できない。中長期の資産配分戦略を見直す必要性が、改めて突きつけられる一週間となるだろう。

Source:Barchart.com