GameStop(GME)の株価が4月第1週、主要株価指数が軒並み下落する中で最大5%上昇した。背景には、同社CEOライアン・コーエン氏がSEC提出書類で明かした1070万ドル相当の自社株買い増しがある。保有比率は約8.4%に達し、同氏の意思表示として市場に強い印象を与えた格好だ。
GameStopは同時に、自社バランスシートへのビットコイン計上を発表しており、コーエン氏の買い増しはこの新戦略への信認とも受け取られている。加えて、第4四半期にはコスト削減の成果で純利益が2倍以上に伸長。だが一方で、ウォール街は同株を「強い売り」と評価しており、高リスク銘柄としての見方は根強い。
ライアン・コーエン氏の1070万ドル買い増しが示す意図と市場の反応

GameStopのCEOライアン・コーエン氏が、自社株50万株を約1070万ドルで取得した事実が、GME株の短期急騰を引き起こした。SECへの提出書類で明らかになったこの買い増しにより、同氏の保有比率は約8.4%へと上昇しており、経営陣による自社への信頼表明として市場に強く受け止められた。一般的に、インサイダーによる株式取得は今後の企業価値上昇への期待と解釈されやすく、今回も例外ではなかった。
一方で、GME株は年初来高値から依然として約30%下落しており、中長期的な回復基調には程遠い。今回の株価上昇は、CEOの行動による短期的な心理的効果が主因と考えられ、企業の実質的な成長戦略が問われる局面は今後も続くと見られる。コーエン氏の買い増しが、収益性回復や事業構造転換といった経営課題の進展に結びつくかは、投資家の注視点となっている。
GameStopのビットコイン戦略とMicroStrategyとの比較から見えるリスクと希望
GameStopは、バランスシートにビットコインを組み入れる方針を発表し、2021年以降注目を集めたMicroStrategy(MSTR)の成功例に追随する構えを見せている。MSTRは過去5年で株価が約2200%上昇したが、それはビットコインの上昇トレンドと巧みに連動した戦略の結果である。GameStopもまた、デジタル資産の保有が新たな株主層の関心を呼ぶと期待しているが、その成否はビットコイン市場の変動性に大きく左右される。
現時点で、GameStopのビットコイン保有規模や調達手段、リスクマネジメントの枠組みは明示されておらず、過度な期待が先行する構図は否めない。MSTRとの比較は短絡的であり、GameStopが同様の成長軌道に乗るには、財務戦略とITインフラの両面での強化が不可欠となる。株式市場では今後、ビットコインの価格変動とGameStopの企業価値との相関性がより厳しく精査されるだろう。
純利益倍増の裏にある構造改革と今後の持続性への懸念
GameStopの第4四半期決算は、純利益が前年比で約2倍となる1億3100万ドルに拡大した。この業績改善は、主にコスト削減の徹底と、業績不振の実店舗の閉鎖、一部海外市場からの撤退といった構造改革の成果である。短期的には収益性の向上に寄与しているが、持続的な成長を支える新たな収益源やビジネスモデルの提示には至っていない。
とりわけ、デジタル分野への本格的な転換やサブスクリプション型サービスの展開など、業界全体の構造変化にどう対応するかが問われている。今回の利益増加が一過性の費用削減によるものにとどまるならば、市場からの評価は限定的となる可能性がある。成長戦略としての再投資や新規事業への布石が伴わなければ、次の四半期での反動リスクも排除できない状況にある。
Source:Barchart.com