Nvidia株が4月7日に90ドルを割り込み、年初来で29%以上、52週高値からは37%以上の下落を記録した。背景には、トランプ前大統領による報復関税への懸念があり、半導体業界全体への影響が投資家心理を冷やしている。

一方、同社は2025会計年度に売上高1,305億ドルを達成し、AI需要に支えられたデータセンター事業は前年比114%増の1,152億ドルを記録。特に新アーキテクチャ「ブラックウェル」は急速な普及を見せており、今後の収益成長を下支えすると見られている。

財務体質も強固で、粗利益率の回復見通しや2026会計年度第1四半期の売上予測(430億ドル、前年比65%増)からも、AI主導の成長シナリオは依然として健在。低P/E水準や強気のアナリスト評価も、反転の兆しと見る向きがある。

AI需要がけん引するデータセンター事業の急成長

Nvidiaは2025会計年度に売上高1,305億ドルを達成し、前年から114%もの急拡大を見せた。その原動力となったのがデータセンター部門であり、AI向けGPU需要の高まりを背景に同セグメントだけで1,152億ドルの収益を記録している。

「ホッパー」に続く最新アーキテクチャ「ブラックウェル」の登場は、同社史上最速の立ち上がりとなり、わずか第4四半期で110億ドルの売上を積み上げた。推論コストの劇的な削減とスループットの向上は、AIワークロードの進化に対応するものとして業界内でも高い評価を得ている。

こうした事業基盤の強化により、主要クラウド事業者が同社のGB200システム導入を加速させており、ビッグテックからの支出は3倍に膨らんでいる。これは、単なる一過性のブームではなく、AIインフラの長期的拡充の一環として読み取れる。DeepSeekのような低価格競合の登場もあるが、高性能と信頼性を求める企業の多くは依然としてNvidiaに依拠しており、その地位が揺らぐ兆しは見られない。

半導体関税への警戒感と株価下落の温度差

Nvidia株は4月7日に90ドルを割り込み、年初来で約3割、52週高値からは37%以上の下落に直面した。この背景には、トランプ前大統領による報復関税政策が再び注目されていることがある。直接的に半導体が関税対象外とされる可能性がある一方で、各国の報復的措置や対抗関税がサプライチェーン全体に波及するリスクが意識されており、投資家心理を冷やしている。

特に、グローバルに展開するNvidiaのような企業にとっては、製造や供給に伴うコスト増が業績を圧迫する可能性を拭えない。

しかしながら、足元の業績および今後の収益見通しを見る限り、今回の株価下落は過剰反応とも受け取れる。2026会計年度第1四半期には430億ドルの売上予想があり、前年比65%という高成長の継続が見込まれていることからも、根本的な成長エンジンに陰りは見られない。ウォール街のアナリストも平均目標株価を177.49ドルと設定しており、現水準との乖離は依然大きい。通商リスクを冷静に織り込むことが、今後の投資判断の鍵となる。

Source:Barchart