Wedbush証券のダン・アイブス氏が、テスラ株(TSLA)の目標株価を43%も引き下げた。引き金となったのは、中国の報復関税と、イーロン・マスクCEOによる政治的発言が引き起こしたブランド毀損の二重苦である。中国市場は同社売上の20%超を占める中、現地メーカーとの競争激化が避けられない情勢だ。
加えて、第一四半期の納車台数は前年同期比13%減となり、需要減速の兆候も顕在化している。アイブス氏は「ブランド問題により、将来的な顧客基盤の1割が失われた可能性がある」との見方を示し、これがさらなる株価圧力につながる恐れがある。
年初来高値からすでに約45%下落したTSLA株は、2024年大統領選前の水準に逆戻り。アナリストによる目標株価の下方修正が相次ぐ中、投資家はテスラの成長性を改めて見極める局面に差し掛かっている。
中国市場依存のリスクが顕在化 報復関税がテスラの収益構造に直撃

テスラの年間売上のうち20%超を中国市場が占めている中、4月10日から発動される34%の対米報復関税は、同社の価格競争力に深刻な打撃を与える構図となっている。中国国内のEV市場では、BYD、NIO、小鵬汽車といった地場企業が台頭しており、価格上昇を余儀なくされるテスラ車にとって顧客流出の圧力は避けられない。特に、BYDは2024年に売上高で1,000億ドルを突破しており、テスラを数値面で凌駕する実績を示している。
加えて、政治情勢が経済活動に波及する状況は続いており、テスラの中国依存体質は短期的に調整が困難である。報復関税の影響は単なるコスト転嫁では済まされず、販売台数とシェアの双方に持続的な下振れ圧力がかかる。販売国の多様化が急務だが、中国の販売比率の高さを考慮すれば、一朝一夕の脱却は難しい。戦略の転換を迫られる局面において、これまでの成長路線が大きく揺らいでいる。
「ブランド危機」の波紋 イーロン・マスクの影響とテスラの構造的課題
Wedbush証券のダン・アイブス氏は、イーロン・マスクの政治的発言がテスラブランドに対する国際的信頼を損ねており、将来的な顧客基盤の10%を失った可能性を指摘している。これは単なる一時的な風評被害ではなく、グローバル市場におけるブランド資産そのものの毀損に繋がりかねない構造的問題である。こうした評価は、同氏がテスラ株の目標価格を43%引き下げる決定的要因の一つともなった。
第1四半期の納車台数は336,681台と、前年同期比で13%の減少を記録しており、需要減退の兆候が浮き彫りとなっている。ブランドの求心力が衰えた結果、価格競争力や技術力だけでは補いきれない限界が表れている可能性がある。マスク氏の発言が経営リスクと化している現状は、個人の発信が企業価値に直結する現代の企業統治の脆弱性を象徴している。CEOの振る舞いが株価を規定する時代において、企業の中長期戦略にも再考が迫られている。
Source:Barchart.com