Appleが米国向けiPhoneの供給拠点として中国からインドへの移行を加速させる可能性が浮上している。背景には、トランプ前大統領による新たな一律関税の再導入と、中国製品への最大108%に及ぶ高率課税がある。

Appleは3月末の3日間で5便を空輸するなど、現行価格維持を目的とした緊急対応を実施済みだが、iPhoneの約90%が依然として中国で生産されており、根本的な打開策には至っていない。インドでの生産比率は2025年末でも20%とされ、米国需要を支えるにはなお不足する見込みである。

関税免除の再取得も模索されているが、今回は明確な制度が存在せず、トランプ氏の強硬姿勢を踏まえると実現の可能性は限定的との見方がある。

中国依存からの脱却を模索するAppleの戦略的転換点

Appleは、米中間の通商摩擦による影響を受けて、製造拠点の分散を加速させている。現時点でiPhoneの約90%、iPadの約80%が中国で組み立てられており、今回のトランプ政権による追加関税措置は、Appleのコスト構造に深刻な影響を及ぼすと見られている。

これを受け、Appleはインドからの米国向け輸出を強化する姿勢を見せており、3月末には5便に及ぶ緊急空輸が行われたと報じられている。インドでは現時点でiPhoneの10~15%が組み立てられており、政府による輸入税の軽減措置が継続すれば、2025年末までに20%へと拡大する見込みだ。

しかし、依然として米国市場を満たすには程遠い水準であり、インドの生産能力やサプライチェーンの整備には時間を要する。Appleの対応は短期的な価格安定を狙ったものに過ぎず、構造的な変革には至っていない。インド拠点への依存強化は合理的な動きといえるが、供給の安定性や品質維持の観点から、中国を完全に代替することはなお難しい局面である。

再び問われる関税免除の可能性とその限界

Appleは過去にも関税免除措置の申請を行い、一部成功を収めている。今回も同様の措置を通じて価格上昇を抑制しようとしているとされるが、今回は事情が大きく異なる。新たな関税は「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づいて一律課されており、前回のように企業単位で免除申請を行う枠組みが存在しないのが実情である。

Appleがこの制限を回避するには、トランプ大統領自身による命令による例外措置が必要となる。しかしトランプ氏はすでに、特定の素材を除いて一切の例外を認めない姿勢を示しており、Appleが再び関税免除を獲得する道筋は極めて不透明である。

330億ドル規模の損失を被っているAppleとしては、価格維持とサプライチェーンの維持を両立させるためにあらゆる手段を模索せざるを得ない状況にあるが、政治的な駆け引きの要素が強まる中で、企業判断だけでは限界がある。ティム・クックCEOがトランプ氏と特定課題に絞って交渉を進める戦略に出ているとの報道もあるが、その実現性は予断を許さない。

Source:AppleInsider