ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの現金および米国債保有額が、2025年4月時点で過去最高の3,340億ドルに達した。S&P500が2日間で10%下落するなど市場が急変する中、投資家の関心はバフェットがこの潤沢な資金をどのように活用するかに集中している。

関税問題、インフレ懸念、景気減速、過熱した株式市場の評価が複合的に作用し、売り圧力が高まるなか、バフェットは自社株買いの再開、既存銘柄への追加投資、新規銘柄の取得といった複数の選択肢を慎重に見極めている。

米国雇用統計が堅調だった一方で、S&P500やナスダック、ラッセル2000など主要指数は大幅に下落しており、バークシャーの行動が今後の市場の流れを左右する可能性があると見られている。

史上最高の現金保有額が意味する市場への影響力

バークシャー・ハサウェイが保有する3,340億ドルもの現金と米国債は、同社が今後の金融市場において極めて重要な存在であることを象徴している。市場が2日間で急落した際も、同社はその豊富な流動性を背景に冷静さを保ち続けた。この資金は単なる待機資産ではなく、適切な買い場を探るための戦略的な砲弾と位置づけられる。

2025年に入り、S&P500が13.7%、ナスダックが19.3%、ラッセル2000が18.1%下落するなど、市場全体が調整局面に入っている中で、バフェットの動きが今後の投資家心理に及ぼす影響は小さくない。これまで24四半期続けていた自社株買いを2024年後半に停止したことも、同社の内部的な評価基準と市場の過熱感を踏まえたものと捉えられる。

ただし、自社株の下落が450〜475ドルという支持帯に接近する中、買い戻しが再開されれば、それは市場全体に対する一つの「底打ちシグナル」として機能する可能性がある。バークシャーの動静は単なる企業判断にとどまらず、世界的な投資家にとっての指針となっている。

関税交渉と企業業績が左右する投資判断の行方

市場の混乱の背景には、トランプ政権下で再燃する通商政策の不透明感がある。ベトナムとの関税ゼロ合意やカナダ、中国、EUとの交渉進展の可能性は、市場を覆う不安材料を解消する鍵となる。バフェットが現時点で慎重な姿勢を取っているのは、こうしたマクロ経済要因の行方を見極める必要があるためであろう。

一方で、アメリカン・エキスプレスやクラフト・ハインツといった既存投資先の株価が大幅に下落する中、保有比率にかかわらず買い増しを行ってきたバフェットの過去の投資スタイルは、再び発動される余地を残している。特にオキシデンタル・ペトロリアムは、8%の下落で52週安値を記録したことで注目される。

ドミノ・ピザに見られるように、バークシャーはすでに一定の保有を有する新興銘柄に対しても積極姿勢を崩しておらず、今後の市場環境次第では追加投資の可能性が高まる。ただし、それらの判断は企業の財務健全性と長期収益性を精査した上で行われる点に変わりはない。

新規銘柄選定の鍵となる配当性と構造改革

バフェットが新たに関心を寄せている企業の一例として、コンステレーション・ブランズやボーイングが挙げられる。前者は酒類販売を手掛けるグローバル企業であり、安定的な配当と消費財セクターの防衛的特性が評価されている。一方、ボーイングは過去の機体トラブルと経営陣刷新を経て、2025年3月にF-47開発契約を獲得し、復活の兆しを見せている。

バークシャーが重視するのは、株主還元を伴う安定収益の確保に加え、経営陣の実行力と再建戦略である。ボーイングへの投資を検討している背景には、政府契約の大型受注という外部要因だけでなく、企業改革の信頼性が重要な評価軸として機能していると考えられる。

配当によるリターンを現金再投資という形で取り込むバークシャーのスタンスは、企業の直接的な配当利回り以上に、内部留保を通じて企業価値を高められるかどうかという、より本質的な視点に立脚している。市場が混乱する中、そうした視点の堅持こそが長期的な優位性につながる。

Source:24/7 Wall St.