Wedbush証券のダン・アイブス氏は、トランプ前大統領による関税政策がAppleとTeslaに深刻な打撃を与える可能性を指摘し、両社の株価目標を大幅に引き下げた。AppleはiPhoneの9割を中国で製造しており、生産拠点の集中が致命的なリスクとされた。実際にAppleの株価は4.3%下落し、180ドルに落ち込んでいる。
一方Teslaは、関税だけでなく、CEOイーロン・マスク氏の政治的発言がブランド毀損を招いており、欧米および中国市場での販売不振に拍車をかけていると分析された。Teslaの株価は一時10%の急落を見せたが、その後わずかに回復した。米中対立が再燃する中、グローバル企業の地政学的リスク耐性が再び問われる展開となっている。
Appleに重くのしかかる中国依存と関税の連鎖反応

Appleが直面する最大の課題は、生産体制の約90%を中国に依存しているという一点に集約される。iPhoneの製造と組み立ての大半が中国で行われているため、トランプ前大統領が打ち出した追加関税の対象となれば、原材料コストから出荷価格、最終的な消費者価格に至るまで、全体のサプライチェーンに波及的な影響が生じる構造だ。
Wedbush証券のダン・アイブス氏はこれを「経済的関税のアルマゲドン」と呼び、Appleほど深刻な打撃を受ける米国企業は存在しないと断じた。実際、Appleの目標株価は250ドルに引き下げられ、株価も180ドル台に沈んでいる。
こうした状況は、製造拠点の過度な集中が地政学リスクに直結することを如実に物語る。サプライチェーンの柔軟性や代替生産地の確保といった構造改革が遅れてきたツケが、今まさに市場評価として跳ね返っていると言える。政治の動向に生産活動が左右されるという現実は、今後の製造業の戦略に根本的な転換を迫る兆しでもある。
テスラに襲いかかるブランド価値の揺らぎとCEOの言動
Teslaに関しては、関税リスクに加えて、イーロン・マスクCEOの政治的なスタンスがブランドイメージに影を落としている。ダン・アイブス氏は、マスク氏がトランプ氏に歩調を合わせる姿勢を見せていることが、米国や欧州のみならず中国市場にも悪影響を及ぼしていると分析した。
とりわけ中国においては、BYDなどの国産EVブランドへのシフトが進んでおり、Teslaが持っていた先進性やステータスとしての魅力が薄れつつある。株価目標は315ドルに引き下げられ、10%超の下落を記録するなど、市場の反応も冷ややかだ。
企業トップの発言が国際的な販売戦略や顧客ロイヤルティにまで影響を及ぼす事態は、ブランド経営において看過できない問題である。とりわけグローバル市場においては、政治と距離を取ることが長期的な信頼を築く鍵となる。Teslaが世界規模の象徴的存在であり続けるためには、マスク氏自身のリーダーとしての振る舞いもまた、問われる局面に差し掛かっている。
Source:TechCrunch