サムスン電子が直面する半導体部門の停滞は、2025年第1四半期における営業利益を前年比21%減の約36億ドルに押し下げる見通しとなった。前年同期の45億ドルからの減少幅はおよそ10億ドルに達し、同社にとって大きな痛手である。
主要因は、NVIDIA向け高帯域幅メモリ(HBM3e)の認証取得の遅れと、DRAMおよびNAND型フラッシュの価格急落にある。SKハイニックスとの競争で後れを取ったことで、主力製品の販売機会を逃し、他分野での補填も限られたままだ。
加えて、先端ノードでのファウンドリ事業が期待を下回ったことで、米国新工場の稼働開始も2026年以降にずれ込む可能性が高い。モバイル事業の健闘は見られるが、半導体の重圧が全体業績に暗い影を落としている。
高帯域幅メモリでの遅れが業績を直撃 NVIDIA認証未取得の影響

サムスン電子は、次世代の高帯域幅メモリ「HBM3e」モジュールにおいて、米NVIDIAからの認証を未だ得られていない。この事実は、AI需要の爆発により成長を続けるメモリ市場で、ライバルのSKハイニックスに対して決定的な後れを取る結果を招いている。NVIDIAはAI処理向けGPUに最適化された高性能メモリを求めており、供給先としてSKハイニックスを選定している状況が続いている。
一方で、HBMの競争は技術力だけでなく、信頼性試験の通過や発熱・消費電力の最適化といった多面的な基準に左右される。現時点でサムスンのHBM3eがこれらの基準を満たしていない可能性があるため、認証プロセスが難航しているとの見方もある。これは製品投入の遅れに直結し、収益機会を失う要因となっている。
こうした状況が2025年第1四半期の営業利益予測に影響を与え、前年同期比で21%、約10億ドルの減益となる計算である。収益を下支えするはずだった先端メモリ製品が市場投入できないまま、シェア争いから取り残されている現実は、同社の中長期的な競争力にも陰を落とすこととなるだろう。
メモリ価格の急落と中国市場依存の限界
サムスンはDRAMおよびNANDフラッシュの価格急落という二重苦に直面している。2024年第1四半期における価格下落率は、DRAMが約25%、NANDが50%とされており、収益構造を直撃している。これらメモリ製品は長らく同社の利益を支えてきたが、需給バランスの崩壊と価格競争の激化により、その役割は急速に揺らいでいる。
同社は旧型メモリ製品を中国市場に向けて販売することで一定の収益確保を図っているものの、その多くは米国の輸出規制対象外の低性能チップに限られる。高性能製品の供給が制限される現状では、成長の余地は限定的であり、収益源としての力不足が否めない。短期的な補填策に過ぎず、戦略的な打開には至っていない。
また、これまで中国市場は価格競争力に優れた製品で数量を稼ぐ戦略が通用してきたが、今後は現地企業の技術進展により依存度を下げざるを得ない局面も想定される。メモリ価格の回復が見通せないなかで、量に頼る旧来の収益モデルの限界が鮮明になりつつある。
Source:SamMobile