Microsoftは2024年3月25日公開のオプションアップデートKB5053643で、Windows 10のタスクバー時計から「秒」表示を完全に削除した。この変更は4月の定例更新で全ユーザーに自動適用される予定で、日付とカレンダー表示のみに制限される。
GUI負荷を軽減しCPUの省電力化を狙う措置とされるが、プログラマーや精密な時間管理が求められる利用者には実用性の低下が懸念されている。また、Windows 10のサポート終了を前に、移行を促すための意図的な仕様変更との見方も根強い。
秒表示の削除が与える実用面での影響

KB5053643を適用したWindows 10では、タスクバーの時計をクリックして表示されるフライアウトメニューから「秒」の表示が完全に消された。これにより、時計表示は時・分・曜日・カレンダーに限定され、以前可能だった秒単位での時刻確認ができなくなった。タスクバー上の時計自体は従来通り「時」と「分」のみを表示するが、詳細な時間確認には別の手段が必要となる。
この変更は、時刻の正確な把握を必要とする利用者にとっては致命的な不便となる可能性がある。たとえば、プログラムやスクリプトの実行タイミングを秒単位で監視する環境、あるいはシステム管理者がネットワーク時刻との誤差を厳密にチェックする場面では、今回の仕様変更により作業効率が明らかに低下する。一見小さな調整に思えるが、日常の操作に直結する変更である点に注意が必要だ。
加えて、既存機能の削除という方向性自体に戸惑いを覚えるユーザーも少なくないはずだ。新機能の追加とは異なり、慣れ親しんだ要素を意図的に削る行為は、環境維持を重視する層にとっては心理的負担が大きい。
秒表示が「負荷」とされる理由と背景
Microsoftは、秒表示がグラフィカルユーザーインターフェースに継続的な負荷をかけ、結果としてパフォーマンスに悪影響を及ぼすという理由でこの仕様変更を実施した。Windows 10では1秒ごとに時計の表示を更新する必要があるため、これがCPUの省電力モードへの移行を妨げ、全体的な消費電力の増加につながると説明されている。
この理屈は、かつてWindows 11がリリースされた際に秒表示を省いた理由とも一致している。ただしWindows 11では2023年以降、秒表示をオプション機能として再び選択できるようになった。対照的に、Windows 10では今回その選択肢すら完全に取り払われる形となり、自由度が後退した印象を受ける。
一般的なPC使用において秒単位の更新が目立った負荷となる場面は少ないと考えられるが、古い構成のPCやバッテリー駆動時のモバイル機器など、一部の状況では理にかなった措置といえる。ただし、秒表示の有無を利用者が選べないという点において、Microsoftの姿勢には賛否が分かれる余地がある。
サポート終了前に仕掛けられた仕様変更の意図
Windows 10の延長サポート終了が2025年10月に迫る中で、Microsoftがこのタイミングで機能削除に踏み切った背景には、単なる負荷軽減以上の意図があると見る向きもある。Windows Latestによると、こうした仕様変更はWindows 10の使い勝手を意図的に損なうことで、利用者にWindows 11への移行を促す狙いが含まれている可能性があるという。
秒表示といったニッチだが確実に支持されていた要素を除外する行為は、特定の用途に依存する層には強い不満をもたらす。一方で、Windows 11では再び秒表示が選択可能となっていることを考えると、新OSの柔軟性を強調するための比較材料として、この仕様差が意図的に設計された可能性は否定できない。
このように、OS選定に影響を与える「小さな違い」を積み重ねることで、企業としての誘導が行われている構図は透けて見える。ただし、旧OSのユーザーに対する説明責任や選択肢の提示が不十分なまま変更が進む場合、その反発は無視できない規模に達するリスクも孕んでいる。
Source:PCWorld