Apple MusicがWindowsノートPC上でDolby Atmosに正式対応した。バージョン1.1284.20225から利用可能となり、Galaxy Bookを含む対応機種で空間オーディオの立体的な音響体験が楽しめる。
Appleは併せて、Windowsユーザー向けに設定方法を解説した新サポートドキュメントを公開。再生環境にはDolby Atmos対応スピーカーが必須とされている。
Apple Musicは2021年からDolby Atmos対応を開始していたが、これまでWindowsのみが非対応だった。なおSpotifyは現時点で同技術を未採用のままである。
Apple Musicの空間オーディオがWindowsに解禁された背景

Apple MusicがDolby Atmosに対応したのは2021年6月だったが、これまでその恩恵を受けられたのはApple製デバイスやAndroid端末に限られていた。Windows搭載のPC、とりわけノートパソコンにおいては、同じApple Musicアプリを使っていてもDolby Atmosによる再生は不可能だった。しかし今回、バージョン1.1284.20225へのアップデートにより、ついにWindows版でもこの機能が利用可能となった。
対象はGalaxy BookをはじめとするDolby Atmos対応スピーカーを備えたPCで、Microsoft Storeから配布されている公式アプリにより体験できるようになっている。Appleはこの機能追加に合わせて、設定手順を説明する新たなサポートドキュメントも公開しており、初めてのユーザーにも配慮した展開となっている点が印象的である。
長年Apple Musicの高音質配信を望んでいたWindowsユーザーにとって、このアップデートは待望の変化だと言える。Appleがついにクロスプラットフォームへの本格対応を進めたという意味でも、音楽体験の自由度は一段と広がった。
Dolby Atmos対応がもたらすリスニング環境の変化
Dolby Atmosは、音をチャンネルではなく「オブジェクト」として扱う方式を採用しており、従来のステレオや5.1chでは得られなかった立体的な音の動きを再現できる。音が左右だけでなく上下にも移動するような錯覚を生み、映画館で体験するような没入感を個人のデバイスで味わえる点が最大の特徴である。
Apple Musicではこの技術を「空間オーディオ」として提供し、アーティストが意図した音像をそのまま届けることを重視している。今回、Windowsにその環境が整ったことで、ハイエンドのヘッドホンやスピーカーを活用するユーザーにとっても、再生機器の選択肢が広がることとなる。ただし、Dolby Atmosの実力を引き出すには再生デバイス側の性能が鍵を握る。
一方で、Spotifyが未だにDolby Atmosに対応していない点も見逃せない。今後の音楽ストリーミング市場では、高音質・高臨場感の再生体験が一つの競争軸になる可能性があり、その意味でもApple Musicの今回のアップデートは戦略的な一手と捉えることもできる。
音楽体験の多様化と今後への期待
Apple MusicのDolby Atmos対応は、単なる音質向上にとどまらず、リスニングスタイルそのものを変える可能性を持っている。これまではiPhoneやMacといったApple製品に囲まれた環境でしか体験できなかった空間オーディオが、今後はWindowsノートPCというより身近なデバイスでも再現できるようになる。これにより、たとえば仕事中のBGMや、自宅のスピーカー環境での音楽鑑賞にも立体感のある音響が自然に取り入れられる。
また、Apple MusicはDolby Atmos以外にもロスレスオーディオに対応しており、環境さえ整えば圧縮のない原音に近い再生も可能となる。一方で、SamsungのTizen OSなど一部の環境では依然として非対応のままであり、すべてのデバイスで統一された体験ができる状況には至っていない。
今後はより多くのプラットフォームでDolby Atmosが当たり前になるか、あるいはSonyの360 Reality AudioやDTS:Xなどが逆に巻き返すかも含め、音楽の楽しみ方はさらに多様化していくだろう。選ぶ側にとっては、それぞれの技術の違いを体感しながら、自分に最も合った環境を探す時代が本格化しつつある。
Source:PhoneArena