2025年初頭のCPU-Z統計により、AMDが世界CPU市場で16.6%のシェアを獲得し、対照的にIntelは10%の大幅な下落を記録したことが明らかとなった。AMDの成長を牽引したのは、ゲーマーや自作PCユーザーから高評価を得た「Ryzen 7 9800X3D」で、単体で全検証システムの4.3%を占める圧倒的な人気を誇る。
加えて、8コアCPU構成の使用率が前年比32.6%増と急伸し、24.7%を占めた点も注目に値する。これは性能と効率の両立を重視する市場の需要変化を映し出している。
さらに、AM5プラットフォームが前年比144.9%の成長を遂げ、GPU市場でもNVIDIAに迫るなど、AMDはCPUとGPUの両面で支配力を拡大しつつある。
Ryzen 7 9800X3Dが示すユーザーニーズの変化とAMDの戦略的勝利

2025年初頭、Ryzen 7 9800X3Dが自作PC市場で突出した存在感を放ち、CPU-Z上で4.3%という高い普及率を記録した。この結果は単なる製品人気の表れではなく、AMDが長年培ってきたキャッシュ構造と消費電力制御の最適化技術が結実したものである。同CPUはゲーミングと並列処理の両立を求めるユーザー層の要望に的確に応え、従来の性能至上主義では捉えきれない多様な評価軸で支持を得た。
加えて、同シリーズの成功はAMDの製品ポートフォリオ全体にも波及効果を及ぼした。Ryzen 5 5600Xが2.1%のシェアを保持し続けている点からも、フラッグシップモデルの影響がミドルレンジ製品にまで及んでいることが読み取れる。これは単一製品のヒットではなく、ブランド全体の信頼感向上によるものと位置づけられる。
注目すべきは、ユーザーが高性能を求めながらも価格性能比に敏感であるという点である。AMDは9800X3Dでそのバランスを見事に提示し、結果として競合であるIntelから10%の市場シェアを奪う構図を生んだ。今後も同様の思想が設計思想の中核となる限り、AMDの優位性は持続する可能性がある。
AM5ソケットと8コア構成が示す次世代構築志向の台頭
CPU市場での構成比変化にも顕著な動きがある。CPU-Zの統計によれば、2025年における8コアCPUの採用率は24.7%となり、前年から32.6%の大幅な増加を記録した。この成長は、Ryzen 7 9800X3Dの普及に伴う性能要求の上昇と連動している。特に動画編集、ゲーム配信、マルチタスク環境において8コアの実用性が広く認識され始めており、4コアからの明確な移行傾向が読み取れる。
また、AM5プラットフォームの台頭も見逃せない。前年比144.9%という成長率を記録し、全体の15.1%にまでシェアを拡大した。これは従来のAM4の支配を脅かす存在となっており、単なるソケットの進化にとどまらず、次世代システム構築への期待感の裏返しとも言える。特筆すべきは、X870やX870Eといった高価格帯のチップセットではなく、B650のような中価格帯の選択が顕著である点だ。
この傾向は、ユーザーが性能だけでなく将来的なアップグレード性やコスト管理を重視していることを示唆している。AM5の採用が進む背景には、拡張性・長期運用性を求める層の厚みがあると考えられ、単年の流行に終わる可能性は低い。構成要素の選定そのものが、今後のプラットフォーム競争の鍵となるだろう。
GPU領域での存在感拡大とNVIDIAとの差を詰める構図
AMDの進撃はCPU領域にとどまらない。GPU市場でも同社は着実な進展を遂げており、CPU-Zの統計によれば2025年時点でGPUシェアを16.6%にまで引き上げた。これに対し、NVIDIAは6.4%のシェアを失っており、全体の構図に明確な変化が生じている。依然としてNVIDIAが優位ではあるが、2021年以降続くAMDの緩やかな追撃がついに市場の目に見える形で現れ始めた。
この背景には、AMDが掲げるエコシステム戦略がある。CPUとGPU双方において統一されたアーキテクチャやドライバサポートを提供することで、システム全体の最適化を実現し、ユーザーにとっての操作性・互換性の向上を実現している。また、価格面での柔軟な設定が、NVIDIAに比べてコスト意識の高い層の支持を集める要因ともなっている。
ただし、この構図が即座に逆転する兆しはまだ見えない。NVIDIAの依然として強固なブランド力と技術的優位性は簡単には崩れないため、AMDは長期戦を覚悟する必要がある。とはいえ、GPU分野における存在感の拡大は、総合的なプラットフォーマーとしての立場を強化する重要な一歩である。CPUとGPUの両輪でシェアを拡大する姿勢は、競争軸を根本から変える可能性をはらんでいる。
Source:TechnoSports